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#Six

 しかも彼とは同性。どう足掻いても紅緒を恋愛対象として見るなんて不可能だ。それに加えて彼の立場は爵位を持った歴とした貴族だ。彼にはハミルトン家を繁栄させ、この国を導く義務がある。  それでも少しくらいは――と思ってしまうのは仕方がない。だってどうしようもないくらい彼を愛しているから。長い年月を掛けて育んできた恋はもうすっかり成熟し、自ら手折ることさえもできなくなってしまった。  その彼が落胆の色を浮かべている。  たとえ自分の想いが届かなくとも、好きな人が悲しいと紅緒も辛い。  シャーリーンとの婚礼が決まった時、彼の元を去ることなく傍に居ることを望んだのは他でもない紅緒自身だ。  たとえ報われない想いでも、それでも紅緒が好きな笑顔を見られるのなら――その笑顔が誰に向けられたものだとしても構わない。 (だからどうか笑ってください)

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