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#Seven
紅緒が見たいのはけっして唇を引き結んだ顔ではなく――曇り空のように翳 んだ蒼の瞳でもない。
紅緒が見たいのは、幼い頃から大好きだった陽だまりのようなあの笑顔だ。
「どうか気落ちなさらないでください。貴方がお元気なのが誰よりも奥方様がお望みでしょうから……」
痛む胸を押さえながら、紅緒はそっと告げた。
声が掠れてしまうのは仕方がない。それだけティボールトを愛しているのだから。
けれどもこの声音はシャーリーンが逝ってしまったためのものだと誤魔化せる。
「奥方……か、そうだな」
「…………?」
自分は何か悪いことでも言ってしまっただろうか。ティボールトの唇は引き結ばれてしまう。
紅緒がシャーリーンの名を出すといつもこうだ。
彼は最愛の妻を思い出し、苦しんでいるに違いない。
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