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#Twenty Five
その彼は目を窄め、紅緒を咎めるような眼差しを向けてきた。
たったそれだけなのに、胸が痛めつけられる思いがする。
紅緒は悪いことなんてなにひとつしていない。にも関わらず、彼はなぜ自分を咎めるのか。
紅緒はますます意味が判らなくなった。
「……君を忘れられなかったからだ」
室内にため息が混じった彼の声が響く。
その声音は長年にわたる疲労が影を落としていた。
「同性の恋はなかなかに難しい。自分の感情で愛する君を巻き込むまいと考慮した。許してくれ、ぼくは君をずっと愛していた。いや、今でも愛している。妻がこの世を去り、ようやくまた心に平穏がやって来ると思ったのに、君への恋を諦めるために先のない妻を利用した。彼女への罪悪感が消えず、そして君への恋を諦められずにいる。ぼくはいい加減、君の呪縛から解かれるべきだ。亡きシャーリーンもそう願っている。君だってそう思うだろう?」
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