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12 翌日③ 交わる〜シてほしいことを、するよ〜 ※R-18
ベッドの端に、ふたり並んで腰を下ろす。
自然と視線が絡んだ。
ほんの数秒の、言葉もない沈黙。
そして次の瞬間――
レンの指が、そっと椋の頬に触れる。
さらりと撫でるように滑った指先は、そのまま首筋へ。
耳の裏をくすぐるように、やさしくなぞっていく。
「……っ」
思わず、期待に震えるような吐息が漏れる。
椋は頬を赤らめながら、ぎゅっと目を閉じた。
いつまでも初々しい反応に、レンがふっと笑う。
どこか意地悪そうで――でも、誰よりもやさしい微笑み。
そして、唇がふれた。
ひとつ、軽く。
それから、もう一度。
今度は深く、ゆっくりと。
舌先が触れて、息が混ざる。
温度と温度が溶け合って、ふたりの間に静かに熱が満ちていく。
「…っん、ふぁ……っ」
キスの合間に、椋のパジャマのボタンがレンの手で一つずつ、器用に外されていく。
指先の動きはゆっくりで、でもどこか楽しげで。
椋は、レンのペースにただただ飲み込まれていく。
甘くて、逃げ場のないこの空気に――自分から浸っていくようだった。
そんなとき。
ふと、レンの爪先が布越しに椋の胸元を、カリッと甘くなぞる。
ちょうど、乳首のあたり。
「っ……あ」
ピクッと肩が跳ねて、小さな声が漏れる。
その瞬間、ふたりの唇がふっと離れた。
レンが椋の顔をのぞき込む。
唇は薄く濡れて、目元はまだキスの余韻に蕩けていて――頬だけが、真っ赤だった。
「……今、すごく可愛い声出たね」
「だ、だって……! レンの指、変なとこ……っ」
「変じゃないよ。……ここ、椋が気持ちいいとこでしょ?」
くすっと笑いながら、レンの指先がもう一度、さっきよりもほんの少し強めにカリカリ、となぞる。
「っ、や……やめ、そこは……」
弱いところを的確に責められて、椋は恥ずかしそうに身をよじる。
けれどその動きは、どこか――もっと触れてほしがっているようにも見えて。
レンの瞳に、ふっと欲の火が灯る。
「ねぇ椋。今日は――椋の、してほしいことをするよ」
「え、そ、そんなの……恥ずかしいよ……」
「恥ずかしくないよ。ちゃんと教えて? 椋が、どうされたいのか」
「うぅ……レンの、いじわる……っ」
「ちがうよ。……昨日のお礼だよ。椋がいっぱい甘えさせてくれたから。
今度は、僕の番。椋の望み、叶えてあげたいんだ」
「あ、う……」
静かに囁かれて、胸がきゅうっと高鳴る。
これからレンにたっぷり愛される未来を想像してしまって、恥ずかしさと興奮が一気に押し寄せる
(ドキドキして言葉が出てこない……っ)
そんな椋の様子に、レンがわざとらしくため息をついた。
「椋がお願いしてくれないと、俺、動けないよ?」
残念だな……というふうに、演技がかった表情で身を引こうとする。
残念だなぁ、と演技がかった表情で、身を引く素振りをする。
俳優として名高い彼が、明らかにわざとやっている。しかも、びっくりするほど大根芝居。
……だけど。
ツッコむ余裕なんて、今の椋にはまったくなかった。
「あ、あの……っ」
「ん?なぁに?」
レンが首を傾げて、紳士のように願いを待つ。
椋は顔を真っ赤にしながら、小さな声で言った。
「レンに……僕のお、おっぱい、舐めてほしい、です……」
寝室に、ほんの一瞬の沈黙が落ちる。
あまりにも破壊力抜群なお願いに、危うく獣になりかけた自分を、レンはどうにか理性で押しとどめた。
そして――すっと背筋を伸ばし、美しい笑みを浮かべながら、恭しく言う。
「――仰せのままに」
その言葉とともに、レンは椋のパジャマにそっと手をかけた。
するり、と布が肩から滑り落ちて、肌がふわりとあらわになる。ほんのり赤みを帯びた胸元は、男の身体にしては少し丸みがあって、愛らしい。
(なんて、うまそうな……)
ふんわりとやわらかそうで、まるで、触れたらじゅわりと溶けてしまいそうなマシュマロ。
喉の奥が、思わず鳴りそうになる。
芸能界で仕事をしていれば、女優やグラビアアイドルと関わる機会も多い。
誰もが魅力的で、美しくて、完璧。
でも。
触れたいと思えるのは、抱きしめたいと思えるのは。
胸がざわつくのは、いつだって――
恥ずかしそうにうつむく、目の前のこの男だけだった。
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