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小話③ エプロン【蓮×柚希】
柚希と蓮が籍を入れてから約一ヵ月。
新入社員にも関わらず、ここ最近の蓮は多忙を極めていた。家に帰ってくるのは日付が変わってから。朝も柚希より早く出ていく日々が続いている。
こんな生活を続けていたら身体を壊してしまわないか柚希は心配していたが、若さと優秀なアルファの血が常人では耐え難い激務を可能にしていた。しかし、いくら蓮が優秀といえども限界はある。
余裕たっぷりな笑顔を見せていた顔に疲労の色が増える中、ようやく丸一日の休みが得られた。
午前七時。いつもなら少しの物音でもすぐに目を覚ます蓮だが、この時は柚希が動いても全く起きる気配を見せず、柚希は大きな音を立てないようベッドからそっと抜け出した。
せっかく何も気にせず寝られるんだから、思う存分寝かせてあげないと。
彼の眠りを妨げないように気を付けながら柚希はリビングで家事をし始めた。
「ふぁ……おはよ」
ずしっと肩に重みがかかり、それと同時に誘うようなムスクの香りに包まれる。まだ少し眠気の残る声色にくすりと笑みを漏らし、野菜を炒める手は止めないまま背後の彼に話しかけた。
「おはよ、よく眠れた?」
「あぁ、お蔭様で。ん?このエプロン、新しい?」
「う、うん……前のやつ、は……その……」
もごもごと言葉を濁しながら柚希の耳と頬が赤くなっていく。それだけでなく、腺体のあるうなじ付近もほんのりと赤みを帯び、蓮は訝しげに柚希の顔を覗き込もうとした。
「何したんだ、柚希?」
「……秘密!」
蓮の腕の中でくるりと振り返った柚希は背伸びをして蓮の唇を自らの唇で塞いだ。
まさかこんな可愛い方法で口を塞いでくるとは思わず、その場に押し倒したい衝動に駆られる。だが、それと同時にそこまでして秘密にしたがる内容がますます気になってきてしまう。
恥ずかしくて隠したくなるようなことにエプロンを使ったのかと。
今すぐに聞き出したい気持ちもあったが、きっと今の状態では言ってくれないだろう。ひとまず、以前のエプロンのことは心の中に留め、蓮はぺろっと柚希の柔らかい唇を舐めた。
「どこでこんな可愛い口の塞ぎ方を覚えたんだ?」
「ふふんっ、蓮以外にいないでしょ?」
「可愛い奴め。あ、焦げそうだぞ」
「うわぁっ!」
わたわたする柚希の姿に笑みを浮かべ、蓮は彼を手伝うべく、食器や飲み物の準備をした。
美味しい昼食を二人で食べ、のんびりとした時間が流れていく午後。
リビングでスマホを弄っていた蓮が難しい顔をしながらそれをダイニングテーブルへと置き、疲れた様子で眉間を指で揉んだ。
「蓮、大丈夫?仕事のこと?」
「いや、そうじゃないんだが……」
「じゃあ、実家のこと、とか?」
蓮の傍へと歩み寄り、顔を覗き込む。連日の睡眠不足は一日では解消できなかったのか、目の下にはまだ薄っすらと隈が残っている。
「まだ疲れ、取れてないみたいだね……」
「柚希、癒してくれるか?」
「え、うん、僕にできることなら」
眉間に当てられていた彼の指が下がっていく。そして、切れ長の目が柚希のことを真っ直ぐに見つめた。
真剣な眼差しに心臓がドキリと跳ね、彼の香りがほんの少し濃くなったように感じる。とくん、とくん、と鼓動が早まっていく中、彼の目は弧を描き、そこには悪戯っぽい笑みが浮かんだ。
「柚希の裸エプロンが見たい」
「…………はっ!?」
あまりにも突飛すぎる発言に数秒間フリーズしてしまった。
裸エプロン。
その意味を理解し、思ったよりもでかい声が出てしまったときにはもう手遅れだった。柚希の細い手首は蓮の逞しい手にがっちりと掴まれ、逃げ場を失っていた。
「俺のこと癒してくれるんだろ?」
「は、裸エプロンなんかで癒されないでしょ!」
「癒されるよ。俺が癒されるって言ってるんだから」
だからってそんな恥ずかしい格好できるわけない!そう言って逃げようとしたが、柚希の身体は逃げるどころか彼のほうに引き寄せられてしまった。
「毎日頑張ってる俺にゆずの癒しがほしいなぁ」
「うっ……」
椅子に座っている蓮に見上げられる形でおねだりされ、言葉に詰まる。
その顔は、本当にずるい。
アルファなんだから力でもフェロモンでも使ってどうにでもできるのに。こんな風にねだってくるなんて。
柚希の母性をくすぐるような視線と手のひらを指先でなぞられる感覚にじわじわと全身の熱が上がっていく。
「柚希」
「うぅっ……わ、かったよ……ちょっとだけ、だからね」
「うん」
ニコニコと笑みを浮かべながら手を離した蓮のことを見たあとエプロンに目を移し、再度蓮のことを見る。そして彼の切れ長の目を手で覆い隠した。
「良いって言うまで開けちゃダメだからね!途中で開けたらもうやらないから!」
「はいはい、目瞑って手で隠してるよ」
言葉通りに目を瞑り、更に手で覆い隠したのを確認してから柚希は少し距離を取って服に手をかけた。
どうして、突然、裸エプロンなんて……。
いや、原因が思い当たらないわけではない。きっと昼前に柚希が前に使っていたエプロンのことをはぐらかしたからだろう。
小さく息を吐きながら服を脱ぎ、恥ずかしさを押し殺して素肌の上にまだ数回しか使っていない紺色のシンプルなエプロンを身につけていく。
「ッ……」
部屋の中も、外も、まだ明るい。昼間のリビングで、こんな恥ずかしい格好をしているという事実に、隠れたいという気持ちがありながらも妙な昂りを感じ始めている自分もいた。
じわっと手のひらに汗が浮かび、一つ息を飲み込んでから蓮に向かって声をかけた。
「い、いいよ……」
「ん」
手を下ろした蓮がじっくりと柚希のことを見つめてくる。
蓮には今まで裸だって、恥ずかしい姿だって見られてきた。だけど、今日のこの格好はまた別の恥ずかしさがあり、顔は熱く、瞳も少し潤んできてしまう。
「もう、いい?」
「だめ、こっち来て」
僅かに強制力を漂わせる言い方にひくっと身体が小さく跳ねる。しかし、その中にはこのあと何をされるのかという興奮も入り混じっていた。
ぺたっぺたっとフローリングをゆっくりと歩きながら蓮に近づく。すると、彼の手が腰の後ろに回り、グッと強く引き寄せられた。抵抗する間もなく蓮の片足を跨ぐ形になり、一気に距離が縮まる。
「似合ってる。けど……ここだけ、外していい?」
彼が指差した場所、右肩に付いているボタンだ。
「だ、め……」
ふるふると首を小さく横に振ると彼の指はボタンから離れて下へと降りていった。案外あっさり諦めてくれたのかと思ったが、そんなわけがない。
エプロンに隠れて見えていないはずなのに蓮は迷うことなく柚希の乳首を指先でくりくりと擦ってきたのだ。
「ひぁっ……や、やだ、それっ……」
いつもとは違う硬い布。普段の服とも、直接触られるのとも違う。ざらざらとした質感が乳首を包み、彼の親指と人差し指がそこを捏ねてくる。
再度首を横に振ると彼の手はエプロンの脇から中へと入り込み、直接硬くなった突起を引っ掻いた。敏感になった場所をカリカリと掻かれ、触れられていない腰にも甘い痺れが広がっていく。
「や、やぁっ……れんっ、だめっ……」
身体に力が入らなくなり、両手で彼の肩をぎゅっと掴む。少しでも刺激を和らげようと前屈みになると、蓮のフッと笑う声が聞こえた。
「柚希、それ誘ってる?」
「え……?」
蓮の指がくいっとエプロンの首元を軽く引っ張った。反射的にそこに目を向け、カッと耳まで熱くなってしまう。
刺激から逃れようと前屈みになったことで、エプロンの中が見えてしまっていたのだ。腰紐のおかげで下半身までは見えていなかったが、蓮に弄られて赤くなってしまった胸の突起はしっかりと見えてしまっている。
「これはっ、ちがっ」
見せるつもりなんてなかったのに。そう、弁明しようとしていると先ほど外しちゃダメだと言ったボタンがぷつっと外されてしまった。
肩紐と右上半身を覆っていた布がはらりと落ち、ピンッと立った胸の突起としっとりと汗を掻いた素肌が彼の前に晒されてしまう。
「可愛い」
「ふ、ぅっ、もう、おしまい……」
「だぁめ」
甘い声を出しながら蓮は赤くなった乳首を口に含んだ。それだけでなく、もう一方の乳首もエプロンの上からカリカリと引っ掻き、更なる痺れを与えてくる。
「や、あっ、ぁっ……だめ、んぁっ」
両方の乳首から与えられる異なった刺激に腰はビクビクと痙攣し、まだ触れられていない後孔もじわりと濡れて奥の疼きがひどくなっていく。
「れ、んっ……や、ぁっ……」
柚希の切ない声に蓮が視線を下げると、ある一箇所がエプロンを押し上げていた。紺色の布に濃い染みを浮かび上がらせ、ふるふると震えている。
「もうびしょびしょだな」
「……いじわる」
「気持ち良かっただろ?これは、どう?」
「やっ、ぁあっ!」
布を押し上げている部分を指先で撫でられ、びくっと身体が跳ね上がる。敏感な神経をざらりとした濡れた布が擦っていく感覚はあまりにも刺激が強く、耐えきれずに蓮の手から逃げようと腰を引こうとしたのだが、彼のもう一方の手に引き止められてしまった。
くちゅくちゅと淫猥な音を響かせながら亀頭ばかりを擦られ続け、頭の中は靄がかかったように白くなり、瞳からはぽろぽろと涙が零れ落ちていく。
「ぁ、やぁっ、イっちゃっ」
「いいよ、イっても」
「ゃだ、だめっ、また、よごしちゃっ」
「……また?」
また、という柚希の言葉に蓮の手がぴたっと止まった。
柚希も自身の失言に気付き、ハッと目を大きく見開く。絶頂寸前から現実に引き戻され、一瞬言い訳をしようかとも思ったが、結局は視線を左右に彷徨わせたあと蓮の顔を見て観念したように小さな声で呟いた。
「……この前、蓮がいないときに……一人でしちゃって……近くにあったエプロン汚しちゃったの……」
「ははっ、そういうことか。けど、洗えば落ちたんじゃないか?」
「そう、だけど……蓮なら気づいちゃいそうだなって……す、捨ててはないよ!」
洗濯によって跡は消え、匂いも消えた。一人の時ならば問題なく使うことができる。だけど、どうしても蓮の前でそのエプロンを使うことはできなくなってしまった。
気まずげに視線を落としていると、彼の手が柚希の赤くなった頬を優しく撫でた。
「珍しいな、お前が一人でするなんて。俺が忙しくて寂しかった?」
「……うん」
女々しいことなんて言いたくなかったし、蓮の負担になんてなりたくなかった。だけど、新婚一ヵ月。本音は、もっと一緒に過ごしたい。
一人でしてしまったあの日、本来なら休みだった蓮が急遽会社に呼び出された。寂しさを紛らわすように家事に専念しようとしたのだが、洗濯物に残る蓮の香りを嗅いだ瞬間、どうしても我慢できなくなってしまったのだ。
巣作りをするように洗濯カゴから彼の服を集め、抱き込み、その場で自身の下肢を慰めた。その時、運悪くその場にあったのが今まで使っていたエプロンだ。
蓮の服は匂いを嗅ぐために顔の近くにあったが、適当に置かれていたエプロンは柚希の精液が大量にかかり、ひどい有り様になってしまった。
あの日のことを思い出すと発情期でもないのにあんなことをしてしまった恥ずかしさや我慢できなかった後ろめたさがあり、蓮には黙っていようと思ったのだが、やっぱり隠し通すことはできなかった。
蓮のことを見ると彼はこつんと額と額を当て、ちゅっと軽い口付けを柚希の唇に落とした。
「寂しい思いさせてごめんな。もう少ししたら仕事落ち着くから」
「ん……」
「今日は思う存分甘えて良いから……ゆずのこっちも待ちきれないみたいだし」
ニヤリと口角を上げた蓮の手が柚希のお尻の間を滑り、窄まった穴を押し上げた。そこはすでに期待に満ちた愛液が溢れ、くちゅりと濡れた音が二人の耳に届いてくる。
「ん、ぁっ」
蓮の長く筋張った指が蕩けた内壁を擦っていく。柚希の口からは甘い喘ぎ声が零れ、とろんとした瞳で蓮を見つめた。
やっぱり、蓮に触ってもらうのが一番気持ち良い。
自分の指では得られなかった快感を更に求めるように柚希は腰を小さく揺らした。すると蓮の指が一気に三本に増やされ、圧迫感と共に柚希の気持ち良い場所を的確に擦ってくる。
「あ、ぁっ、れんっ、きもちぃっ」
「ん、今のゆず、すごいエロい顔してる」
「やっ、そんなことっ、あ、ぁっ!」
ぐちゅっと前立腺を強く押し上げられ、目を大きく見開く。
トンットンッ、ぐりぐりっ、と異なる刺激を繰り返され、柚希の両脚はガクガクと震え、今にも達しそうになっていた。しかし、きゅうっと締め付けを強くする度に蓮は前立腺から指を離し、後孔を広げるように指を左右に開いてくる。
柚希の太腿はびっしょりと濡れ、ぽたぽたと落ちた愛液が蓮のズボンにも染みを作っていたが、それに構っている余裕はすでになくなっていた。
「ぃっ、ぁあっ!」
再び強く前立腺を擦られた瞬間、目の前がチカチカと小さく明滅した。射精せずに中だけで甘くイった余韻にぎゅうっと蓮の指を締め付ける。
もっと触って、擦ってほしい。
しかし、そんな柚希の願いとは裏腹に、強い締め付けの中で彼の指は抜けていってしまった。
「ぁあっ、んぅっ……れんっ、なんで……」
「ははっ、もの欲しそうな顔、可愛い。けど、俺も限界だ」
そう言った彼はズボンと下着をずらした。そこに現れたのは血管をビキビキと浮き上がらせたアルファの陰茎。透明な液体を大量に溢れさせ、柚希の中に挿入ることを待ち望んでいるように見える。
「柚希、おいで」
「んっ……」
ごくりと喉を上下させ、体勢を整えて彼のモノの上にぴとりと後孔を押し当てる。エプロンによって結合部は視界に映っていなかったが、柚希の後孔が期待にひくひくと収縮しているのが触れ合った場所から二人に伝わっていた。
中からとろりと溢れだした愛液が蓮の陰茎を伝い落ち、蓮ももう我慢できないというように柚希の腰を両手で掴んだ。
「腰、下ろして」
「う、んっ……は、ぁっ……んぅっ……あぁっ」
ぐちゅっ、ぬちゅっと濡れた音を響かせ、柚希の熱い内壁が蓮の剛直を飲み込んでいく。
蓮の陰茎を怖がってたこともあった柚希が、こんなにも積極的に自分から咥えこんでいく姿に蓮は僅かに口角を上げた。
彼のその表情に柚希は気づいておらず、瞼を薄く閉じ、甘い声を漏らしながら腰を落としている。
「ゆず」
「な、に……ひぁっ!?」
瞼を開けた瞬間、視界に飛び込んできたのは色付く胸の突起に唇を寄せる蓮の姿。そして、止める間もなくそこを甘噛みされ、蓮の陰茎を一気に奥まで飲み込んでしまう。
「あ、あぁッ!」
生殖腔に陰茎の先端がぐりゅっと押し込まれ、白い光がチカチカと目の前に飛び散る。
きゅっと身体を丸めて強すぎる快感をどうにか逃そうとしていると蓮の低い声が耳元で囁いた。
「もしかして、イった?」
「ふ、ぅっ……れんのばかぁっ……ぁんっ、いま、だめっ、あぁっ」
細かい痙攣も収まらないうちに蓮は腰をぐいぐいと押し上げてきた。敏感な生殖腔を熱い杭で刺激され、再び強い快感が襲ってくる。射精を伴わない絶頂から反射的に逃げようとするが、蓮の両手がそれを阻止した。
「柚希、逃げないで」
「だって、イったからぁっ、きゅうけっ、ゃあっ、まってっ、ひっ!?」
ガタンッと椅子が大きな音を鳴らした瞬間、柚希の身体が宙に浮かび上がった。
なんと、信じられないことに蓮が挿入したままその場に立ち上がったのだ。
抱き上げられることは度々あったが、こんな行為の最中に、しかも挿入したままなんて。
いくら柚希が小柄だと言っても成人男性であり、子供のような軽い体重ではない。重力に従うように身体が下がり、蓮の陰茎が更に奥へと入りこんでくる。
「や、ぁあっ、れんっ、こわい、おろしてっ、あぁっ」
「落とさないから大丈夫だよ」
「そういう、もんだいじゃっ、んぁっ、おくっ、だめっ」
少しでも力を抜けば更に深く刺さってしまいそうで、柚希はぎゅっと強く蓮にしがみついた。そんな怖がる柚希とは対照的に蓮は余裕たっぷりに柚希の柔らかなお尻を揉みながら下からとちゅとちゅと突き上げてくる。
「フッ、これいいな」
「んっ、ぁっ、なに、がっ」
「柚希が必死に俺にしがみついてきてくれるのが」
こっちはそれどころじゃない!と反論したかったが、柚希の口からは喘ぎ声しか出てこず、最奥を突かれ続けることに限界を迎えそうになっていた。
「れん、だめっ、また、イっちゃっぅ」
「ああ、良いよ。俺もこのままお前の中に出したい」
「この、ままって……ひっ、ぁあぁっ!」
生殖腔を強く突き上げられ、目の前に閃光が瞬く。ガクガクと激しく身体が痙攣する中、生殖腔に大量の熱い飛沫が注がれた。彼の陰茎がびくびくと脈打ち、柚希の中を満たしていく。
荒い呼吸を繰り返しながら蓮の肩に顔を埋めると、彼の陰茎によって引き伸ばされ、薄くなった結合部の皮膚を彼の指がそっと撫でた。
「柚希、ここに力入れて。零さないように」
「ん、ぁっ……」
連続の絶頂で頭の中はふわふわしている。蓮に言われた意味もあまり理解できていなかったが、柚希は反射的にきゅっと後孔に力を入れた。
奥のほうからくちゅっと濡れた音と蓮の詰めるような息が聞こえ、のろのろと顔を上げて彼のことを見つめる。
「はっ、すごい締め付け。もう一回イきそ」
「うぅっ……もう、や……こわいから、おりる……」
実際には蓮にしっかりと抱きしめられているし、柚希自身もしがみついているから落とされる心配はしていない。だが、このままこうしていたら本当にもう一度抱き上げられたままやられかねない気がした。
薄っすらと涙を浮かべた瞳で蓮のことを見つめると彼は真面目な顔で柚希を見つめ返した。しかし、次の瞬間、その顔には悪戯な笑みを浮かべ、柚希の目尻へキスをしてきた。
「ここで抜いたら床に精液零れるぞ」
「そ、う……だね……」
嫌な予感がする。
新婚一ヵ月、寂しがっていたのは柚希だけかと思っていた。だが、そんなわけがない。むしろ、アルファのほうが独占欲も性欲もオメガより強いんだった。
普段、蓮は理性でそれらを押さえつけている。しかし、この忙しかった一ヶ月、柚希が一人でしてしまったという話、裸エプロン姿。いろんなものが合わさって彼の本能が剥き出しになっていく気配を感じる。
「じゃあ、このまま風呂行こうか」
「えっ……ひっ、あっ!」
蓮は柚希を抱き上げたまま歩き出した。その足取りは本当に成人男性を抱いているのかと思うほどに軽々としている。
まるで柚希は自分が鳥の羽にでもなったかのような気分になっているとあっという間に風呂場まで運ばれてしまった。まさか、またこのままするのかと思いながらも蓮にしがみついていると、予想外なことに彼は陰茎を引き抜き、柚希を床に降ろした。
もしかして、今日はもうおしまい……?
ぱちぱちと瞬きをしながら蓮の顔を見たあと視線を下げようとした。次の瞬間、柚希の身体は蓮の手によって反転させられ、間髪入れずにうなじに鋭い痛みと快感、恐ろしいほどの彼のフェロモンが襲いかかってくる。
「んぅっ!」
「もう少し付き合ってくれ」
「え、あ、あぁっ!」
返事をする間もなく、先ほど抜けた後孔に勃ち上がった陰茎が再び押し入ってくる。ぱちゅんぱちゅんっと背後から激しく突かれ、咄嗟に前に手を伸ばすと冷たいものが手に触れた。
それは鏡だ。頬を赤らめ、涙を浮かべながらも快感に溺れた表情をしている自分が映し出されている。そして、身体半分だけを覆い隠している汚れたエプロンも。
こんな姿を見てしまったら、またエプロンを見る度に今日のことを思い出してしまうかもしれない。
ふるふると頭を振ってその考えを追い出そうとするが、柚希の考えを見透かしたように蓮がうなじにキスをしながら耳元で囁いた。
「たまには裸エプロンも良いだろ?」
「よく、なっ……あぁぁっ!」
柚希の言葉は自身の喘ぎ声と快感によって掻き消されてしまった。そして蓮の濃いフェロモンに全身が包み込まれる。
「寂しかった分、たくさんあげるからな」
この日、一ヶ月の寂しさを埋めるように彼の痕跡をたっぷりと身体に刻み込まれた。それは、オメガの柚希から彼のアルファフェロモンが滲み出すほどに。
蓮は満足していたようだったが、柚希は心の中でこっそりと誓いを立てた。
今後、蓮には適度に息抜きをさせようと。
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