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第91話

 凪にはよくわからないが、ヒバリは何かを感じ取ったのだろう、彼は頻繁に夜の街へ出ては最初に行った店に入った。そこの店員や客とも馴染みになり、楽しそうに笑っている。とはいえ、毎日行っては逆に怪しいからとヒバリは意図的に王宮で夜を過ごす日を作った。今日もその日で、ヒバリに付き添わなくて良い凪も久しぶりにゆっくりとした夜を過ごすことができる。一応は客人であるヒバリとは違い、考慮されているとはいえ凪には日中の仕事もあるのだ。身体は疲れ切っているし、思考も散漫だ。せっかくゆっくりできるのだから早々に寝て、しっかりと身体を休めたら良いと思うのに、夜に動く習慣が出来てしまったからかベッドに横たわってもなかなか睡魔はやってこない。幾度も寝返りを打つが、ただただシーツをグチャグチャにしてしまっただけで効果はなく、凪は深くため息をついて起き上がった。 (せっかくのチャンスなのに……)  明日はきっとまた夜に出ることになるだろう。こんなに早く横になれるなんて本当に貴重なのだ。なのに身体は凪をことごとく裏切って眠ろうとしない。眠ろうとすればするほど、逆に目が冴えてしまう。これでは駄目だと、凪は薄布を羽織って外へ出た。風にあたれば少しは気分も落ち着いて眠れるかもしれないと、ほんの少しの希望を込めて。

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