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第181話
人通りの少ない部屋の前に立ち、凪は静かにノックする。音は抑えているはずだが、静まり返ったこの空間にはやけに響くような気がした。
「凪です。いらっしゃいますか?」
あまりの静けさにヒバリの名を口にするのは躊躇われた。チラチラと周りを気にしていると、カチャリと小さな、しかしやはり響く音が聞こえる。ハッとして彷徨わせていた視線を正面に向けた。
「ナギ殿、いかがなさいましたか?」
開いた扉の向こうにはポリーヌが不思議そうな顔をしながら立っていた。
「何か急用でも?」
サーミフから急ぎの伝言でも預かってきたのかとポリーヌは瞳を僅かに鋭く揺らめかせる。しかし凪は静かに首を横に振った。
「いえ、殿下からは何も。あの、今回は私個人のことでお伺いしました。あの方はいらっしゃいますか?」
やはりヒバリの名を口にするのは躊躇われたが〝あの方〟でポリーヌには十分に通じたようだ。一拍の後、ポリーヌは身体を横にずらして扉を心持ち広く開ける。
「どうぞ、お入りください」
促され、凪は室内に足を踏み入れる。そしてようやく息をついた。
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