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第214話

 母はいつも優しい手をしていた。  温かくて、柔らかで、いつも自分の頭を撫でてくれる。見上げればいつだって、その瞳は自分に向けられていて、口元には微笑みがあった。 〝あなたは宝物よ。だって、お父様とお母様が愛した証なんだもの〟  子供は両親の愛の証。そう言う大人は沢山いて、母もその一人だった。事実、自分は大切にされていただろう。  時折、母が異母兄を見て悲しそうな顔をすることがあった。それでも自分を見ると途端に笑顔になるから、ほんの少しでも役に立てているような気がした。  きっとこれは、自分が母にとっての〝宝物〟だからだろう。両親の、愛の証。時折寂しそうにする母を助けるために自分は生まれてきたのだと、ずっと、そう思って生きてきた。  ずっと、ずっと――。

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