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第216話

「気休めにもならないけれど、これは取らない方が良い。あなたにこの空気は害でしょうから」  人間に呼吸をするなとは言えない。だが凪のためにもハンカチで口と鼻は覆った方がいいと彼は言う。ボンヤリとした思考の中で、何かがおかしいと警鐘が鳴り響いた。 「――ッ! ――ッ!」 「――ッ! ――ッッ――ッッ!」  遠くから聞こえる悲鳴にビクリと肩が震える。何が起こったのかわからず目を見開く凪に、彼は手を伸ばした。そっと凪の身体を抱きしめて、宥めるように背を撫でる。 「何も聞かなくていい。大丈夫、必ずあなたを母君の元へ帰してあげるから」  何も聞かず、何も見なくていい。何度も彼は――ヒバリはそう囁く。知らぬ間に荒げていた呼吸をなんとか元に戻した。

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