223 / 241

第223話

「……置いていって、ください。足手纏いにしかならない」  ヒバリは何度も言っていた。彼は自分の身しか守れないと。凪の身を守るだけのものは持っていないと。それなのにヒバリを追いかけたのは自分だ。それも今回はサーミフの命令ではなく、私情で。  霧が濃くなる。なぜだろう、わからないというのに、今を逃せば全てが消えていくような気がした。 「あなたを危険に晒したのは……僕だから」  だから、置いていってほしい。何もわかっていない凪は全てにおいて足手纏いだ。ヒバリを余計な危険に晒してしまう。先程の男の言葉が信じられるなら、ヒバリがもし見つかってしまったとしても、彼は閣下の元へ帰れる。命の危険がないなら、その方が良い。 「行って、くだ、さ、い……」  あぁ、駄目だ。頭がボンヤリとして何も考えられない。このまま深い眠りに落ちてしまいそうになる。吐く息さえも重い。身体が、指先でさえ沈み込んでいくような感覚に陥る。その時、そっと手が少し冷たいそれに包まれた。 「一緒に行こう。一緒に、来て欲しい。あなたの為だなんて綺麗事は言わない。すべては俺の我儘だ。でも、一緒に逃げて欲しい。俺は、もう後悔したくないから」

ともだちにシェアしよう!