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第225話

(泣かないで……)  ハッとして見つめてくるヒバリに、凪は殊更ゆっくりと瞬きをひとつした。肯定するそれに、ヒバリはほんの少し口端を上げる。なんとも不器用で拙い笑顔だ。普段はあんなにも完璧な美しさをもつ微笑みを見せるというのに、今の彼は笑うことを忘れた幼子のよう。だからこそ、と凪はヒバリの手を強く握って起き上がる。  だからこそ、帰らなければならないだろう。  自分が帰るためではない。彼を――ヒバリを閣下の元へ帰してあげなければ。 「行かないことが後悔になるなら、僕も行きましょう」  どうやら後悔を恐れる目の前の彼は、凪が行かないと言えば梃子でも動かないだろう。何をしたのかさっぱりわからないが、視界の端で転がっている男たちのように全員を倒していつくるとも知れぬ救援を待つなんてことはできない。ならば、多少危険であったとしても凪も一緒に動いてヒバリを逃す方が得策だ。  彼が寂しそうにする顔は、どうしても見たくない。

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