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第477話

 この物語の中では少年となっているが、〝少年〟は必ずしも人である必要はないのだろうと思う。モノであれ、環境であれ、それが自身の幸福に繋がるモノ、無くてはならないモノであることが重要なのだろう。  ならば凪にとっての少年は何だろうか。先程チラと頭によぎったものが、また溢れ出す。 「……そう、ですね。改めて問われると、確かに難しいですね。何が幸せかなんて、一言で表せるものではないのかもしれません……。でも、なんとなく、嫌いなものを気にしなくても良くなれれば、生きる上でずいぶんと気持ちは楽になるのではないかな、とは、思ってしまいます」  気にして考え続けるのはとても苦しい。変えられない過去ならば尚更に。ならばそれ自体を無くせば良いと思う。嫌いなものなどない世界はきっと素晴らしい。でも、無くそうと思っても努力しても、自分の意思に関わらず歓迎していないモノほど向こうからやってくるものだと理解して夢想できないのが大人の悲しきところか。  だからせめて、気にしないで良くなれれば、なんて思う。 「あの時も、ナギは〝大嫌い〟だと言ったな。現状の何もかもが、と言って具体的なことは言わなかったが。――ナギ、ナギの嫌いなものは、なんだった?」  穏やかな声音だ。それは知らぬものを知りたいというよりは、泣きじゃくる幼子に問いかける大人のそれに似ている。ピクリと凪の手が震え、茶の水面が揺らいだ。

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