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第498話
中からの応えにルナは扉を開き、少し頭を下げてから入室する。その様子に、中でくつろいでいた美しい女性――妃候補としてやってきたローラは真っ赤な唇で笑みを浮かべた。
「時間通りに来てくれて嬉しいわ。あなたに頼みたいことがあるのよ」
使用人相手に無駄なお世辞などは言わないとばかりに、ローラは懐から小さな小瓶を取り出すとルナに差し出した。クルリ、クルリとローラの手の動きに合わせて真っ赤な液体がチャプンと揺れる。
「確か、ナギはベリーが好きだとあなたは言ったわね? なら、これを混ぜたジュースをナギに飲ませてくれないかしら」
ナギの好き嫌いも行動パターンも、すべてルナを使ってローラは把握している。だからこれを選んだ。イチゴのように真っ赤な、真っ赤な蜜を。
「しかしナギさんは今ここにはいません。サーミフ殿下と共に離宮に移られました。急に押しかけてジュースを渡すなんてしたら、怪しまれるのでは?」
危ないことはできないとルナは受け取ることを躊躇う。その様子にローラは眉根を寄せた。
「何のためにあなたに声をかけたと思っているの? あなたは殿下の区域に近づいても問題のない使用人でしょう? 殿下へのお使いを頼まれたとか、離宮に入る理由はいくらでも作れるはずよ。それにナギと親しくしておきなさいと言っておいたのに、まさかできていないの?」
そんな怠慢は許さないと語気を強めるローラに、気弱なルナは慌ててフルフルと首を横に振った。
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