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第513話

「殿下はもう宮殿にお戻りになる気はないんでしょ? 王太子殿下もご承知だってはなしじゃないですか。なら、この離宮はサーミフ殿下の思うまま。誰も邪魔なんてしないんだから、誰と愛し合っても問題ないですよ」  何を躊躇っていらっしゃるのか、と弟子は不満げに蒸したポテトをガシガシと潰していく。その心の内を表しているのか、ポテトは粒さえも残らぬ滑らかさになった。 「問題は何も無い。王太子殿下なんかノリノリだからな。でもお二人の関係はどうあったって殿下が動かねえと始まらんからな。その殿下が自覚してるかどうかだ。……ナギさんは多分ぜんぜん自覚なんかしてねえだろうけどな」  側から見れば、実にわかりやすい二人なのだ。凪が側にいる時のサーミフはいつだって楽しそうだし、側にいないとその姿を目で探している。常に側にいるからだろうと言う人もいるが、凪が来るまでは同じように側にいた侍従長にはそのような素振りを見せることはない。信頼の大小ではなく、向けている心が違うのだろうというのはこの離宮にも随行している侍女の言葉だ。凪もまた、サーミフの側にいる時が一番楽に呼吸をしているように思える。サーミフから離れたその姿はひどく小さくて心細そうだ。それらをわかっていないのは本人たちと、彼らの上部のみを見ている者達だけだろう。

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