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01魔王国

「リュアクス様、起きてください」 「リュアクス様、目を覚ましてください」 「なんだ? どうした、ファインにシュネル」 「大臣がお呼びでございます」 「大急ぎでのお呼びなのです」 「あー、また国政のことか、分かった」  俺は黒髪に赤い瞳をしている魔王だ、魔王だが元は人間だった。日本という国の平凡な男だった、いくつかの時に死んで異世界転生して魔王になった。ファインとシュネルは俺の使い魔だ、ファインは金色の髪に青い瞳を、シュネルは赤い髪に茶色い瞳をしている。俺にとっては頼りになる仲間だ。そうして昼寝をしていたら彼らに起こされた、仕方なく向かった先の大臣たちは煩かった。 「今年の収穫は豊作であります、いまのうちに備蓄しておくべきです」 「うむ、そのようにせよ」 「河に堤防を作らなければ穀物が流される恐れがあります」 「では堤防を急いで作らせよ」  他にもいっぱい問題があった、この国には使える宰相が必要だった。どうにか大臣たちとの会議が終わると俺は人間の国に向かって宰相を探し、そうして一目惚れした。エアル・エスタシオンという宰相に俺は一目惚れをした。白い髪に金色の瞳をしていて綺麗だった。だからそのエピカリス国に宰相を花嫁としてくれないと滅ぼすぞと書簡を送った。返事はすぐ来た、エアル・エスタシオンを花嫁として魔王様に捧げますと書いてあった。 「ファイン、シュネル。俺の部屋とその隣の部屋を片付けておくれ」 「かしこまりました、リュアクス様」 「かしこまりました、リュアクス様」  ファインとシュネルは俺の部屋と隣の部屋を綺麗に片づけてくれた、お礼に飴をやったら二人はむっとしていた。 「僕は、子どもじゃないんですよ」 「俺だって子どもじゃないんです」 「あーはいはい、俺から見るとお前たちは子どもだよ」  二人はまだ子どもだった。たった十年しか生きていなかった。俺は魔王で百年くらい生きている、そんな俺からすればファインとシュネルは子どもだった。そもそも宰相は以前から探そうと思っていたのだ。俺は前世はただのサラリーマンで国政のことなんかさっぱり分からなかった。よく百年の間、国が保たれたものだと思っていた。穀物が少なくなるなど問題が起きた年もあったが、その時は他国を攻めて穀物をいただいてしのいだ。俺はできるだけ戦争などしたくなかった、だから今度くる花嫁の宰相には期待していた。花嫁の宰相は供を一人も連れずに馬車でやってきた、馬車を守ってきた護衛騎士なども全て自分以外帰していた。俺は俺の部屋にその花嫁の宰相を呼んだ。 「花嫁として参りました、エアル・エスタシオンでございます」 「うむ、俺はリュアクス・サタナーだ。リュアクスと呼んでくれ」 「かしこまりました、リュアクス」 「俺もエアルと呼ぶぞ、我が花嫁よ。ではさっそくだが……」 「はい、閨の相手でしょうか?」 「いや俺と一緒に国政をみてくれ」 「はぁ!?」 「だから俺と一緒に国政をみてくれ」  エアルにはさっそく我が国の国政を見て貰うことにした、そうしたら案の定いろんな問題点が挙がった。エアルはそれを一つ一つ解決していった、俺の大臣たちもその手際の良さにエアルに一目おいた。こうして俺の国の状態は凄く良くなった、本当に今まで百年よくもったと思う、それくらい俺の国政には問題があった。そして俺はエアルに言った。 「俺の隣の部屋がお前の部屋だ、それからこいつらはファインとシュネル。何かあったらこいつらを呼べばいい」 「あの私は閨の相手をしなくてよろしいのでしょうか?」 「俺は強姦とか嫌いだ、お前がその気になった時に相手をしてくれればいい」 「私がその気にならなかったら?」 「それでも構わん、国政を見て貰った時点でお前には感謝している」 「わ、分かりました。それでは私は部屋で過ごさせていただきます」  俺は強姦とかマジで嫌いだったし、花嫁としてエアルを貰ったけど手はつけなかった。そういえば気にしていなかったが俺ってホモだったのかと気づいた、男のエアルを好きになったのだからホモである。でもまぁエアルは本当に綺麗だったから仕方なかった。長い白い髪に金色の瞳、その瞳で見つめられるとゾクゾクした。本当はエアルを抱いてみたかったが我慢した。黒と白の薔薇を持ってエアルの部屋を訪ねた。 「エアル、お前を好きだ、愛してる。見返りとかいいから受け取ってくれ」 「はっ、はい」 「それにしても閨の相手か? なんてお前の国は何と言ってお前を送り出したんだ?」 「魔王がお前を望んでいるから閨の相手をしろ、我が国に迷惑をかけるなと」 「ちょっと俺はお前の国を滅ぼしたくなったぞ」 「それもいいかもしれませんね、私は天涯孤独ですし国に捨てられたので」  エアルは自分の国に愛着をもっていないようだった、でもせっかく花嫁を送ってくれた国なのでとりあえずは滅ぼさないでやった。 「エアル、散歩に行こう」 「はっ、はい」  俺はエアルを散歩に連れ出した、そして我が国のあちこちを見せてまわる。普通の人間の国と大して変わらない。この国は俺が管理していたから『|貧民街《スラム》』もなく、皆なにかしら仕事を持って働いていた。エアルはいろんなものを見たり聞いたりして驚いて、もちろん国民は皆が魔族だったが人間のエアルにも親切にしてくれた。実は人間も一定数が魔王国に住んでいるのだ。それは国を追われた人間たちだった。そんな人間にも会ってエアルは話を聞いていた、名残惜しかったが夕暮れにはエアルを魔王城へ連れて帰った。 「どうだ、俺の国は問題はいろいろあるが人間でも住めるところだぞ」 「驚きました、魔王国では人間は奴隷になっていると聞いていましたから」 「俺は奴隷がすかん、だから奴隷制を作る気もない」 「あなたの国民は幸せですね、リュアクス」 「そうだといいな、そう願いたい。それじゃ、おやすみ。エアル」 「あっ」  俺はおやすみと言いながらエアルの頬にキスをした、それくらいは許して貰えるだろう。エアルも驚いていたが俺を拒んだりはしなかった。よし、これで今日は良く眠れそうだ。俺は眠りについた。俺は夢の中でエアルからキスして貰った、良い夢だったからぐっすりと眠れた。そして起きたら、ファインとシュネルを呼んだ。 「ん~、二人ともエアルの分も朝ご飯の支度をしてくれ」 「もちろんです、リュアクス様」 「すぐできます、リュアクス様」  そうして俺はエアルの部屋をノックして中に入った、エアルは目覚めたばかりなのかぼーっとしていたが俺が声を変えると目を覚ました。そして身支度を整えると皆で朝ご飯を食べ始めた。もちろんファインとシュネルも一緒である。 「皆さんでご飯を食べるのですか?」 「俺一人の食事は味気ない、だからファインとシュネルも一緒に食べてる」 「食事の内容も人間の国と変わりないですね」 「一部は魔物の肉なども使っているが、人間も魔物を食べるだろう」 「ええ、食べます」 「だからお前も遠慮なく食べてくれ、エアル」  食事をしながら食べられない物があれば言って欲しいとエアルに聞いた。エアルは食べられない物はないらしい。そうして食事が終わると執務が待っていた、もちろん俺はエアルを連れていき。そして分からないことは聞いたり教えて貰った。大臣たちも慣れていてエアルに問題を相談したりしていた。そうして執務を終えると昼ご飯だった、また俺とファインとシュネルそれにエアルも一緒に食べた。 「執務は片付いた、昼からは何をしてもいいぞ」 「それでは図書室はありますか?」 「ある、ファインとシュネル案内してこい」 「了解です、さぁこちらです。エアル様」 「分かりました、こっちです。エアル様」 「ありがとうございます、リュアクス、ファイン、シュネル」  そうしてエアルは図書室で魔王国の文化や風習を勉強している、他にも国政に必要なことを勉強していた。その様子を見て、俺も混ぜてもらった。国王の俺が一番学ばなければならないことだったから。本当に今までも俺は何も分かってなかった、百年の間に国が滅ばなかったのが不思議なくらいだ。エアルはいくつかの書籍を部屋に持って帰った、そうして部屋でも勉強していた。俺も教えていろいろ教えて貰った。だがあまりエアルにくっついてるとキスしたくなるのでほどほどで自分の部屋に戻った。こうして魔王国でのエアルの生活は始まった。

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