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02勇者一行

「ご夕食にしましょう、エアル様」 「そうです、夕食です、エアル様」 「あ、分かりました。ファイン、シュネル、ありがとう」  エアルの一日は決まっていた。朝起きたら俺たちと朝食を食べて、それから俺と執務室に向かう。そこで国政の話を大臣たちや皆でして過ごす。それが終わったら昼食を俺たちと食べる。午後は自由な時間になるから、図書室にエアルは行っていた。そこで国政の本を読んで過ごし、俺もエアルにいろいろと教えて貰い。やがて夕食の時間にファインとシュネルの二人が呼びに来るのだ。 「パンも柔らかいですね、どうやったらこうなるのでしょう?」 「魔王城の台所で聞いてみたらどうだ」 「エアル様なら教えて貰えますよ」 「エアル様は聞いても大丈夫です」 「私はそんなに動きまわってもいいのですか?」 「魔王城の中ならどこへ行っても構わん」 「くくっ、魔王様がついていきますよ」 「ははっ、エアル様が大好きですから」 「ええとだったらあちこち見てまわります」 「もう夜だから明日にしておけ」 「明日の午後の楽しみです」 「午後からなら自由ですよ」  そうして翌日の午後エアルは魔王城の台所でいろんなことを聞いていた、俺も一緒にいてへぇーそうなんだと台所の者の話を聞いていた。その後もあちこちエアルは魔王城を見て歩いた、俺もついていってあの部屋は会議室、あの部屋は応接室などと説明してまわった。 「ありがとうございます」 「…………いや、どういたしまして」  笑顔で礼を言うエアルに俺はキスしそうになったが踏みとどまる。エアルにキスをするのはおやすみを言う時だけ、その時なら拒まれることはなかった。そうして夕食も食べて寝る時間になった、俺はいつものようにエアルに言った。 「おやすみ、エアル。良い夢を」 「は、はい。おやすみなさい」  よし今日もエアルの頬にキスをしたが拒まれなかった。俺はこれは良く眠れると思い寝室に入った。エアルが俺にキスをする夢をまた見た。良い夢だったから、ぐっすりと眠ることができた。翌日になると問題が発生していた。魔王城は首都の中になる、首都は丸い円状の壁で守られていた。四つの門があって、その門の一つに勇者一行がきているということだった。 「エアル、俺ちょっと行ってくる」 「私も行きます、連れて行ってください」 「エアルも来る、じゃあ」 「わぁ、私は重くありませんか」 「羽のように軽いよ、行くぞ」 「はい」  俺はエアルをお姫様だっこして魔王城の窓から飛び降りて、それからひょいひょいっと首都の街の上を走っていった。勇者一行が来ている門のところでエアルを腕から降ろした。そうして俺は勇者一行と対決した。 「俺が魔王、リュアクス・サタナーだ」 「来たな、魔王。俺は勇者の」 「ああ、自己紹介とか要らないから、これから死ぬ相手の名前なんて聞きたくないから」 「なんだと、……え?」  俺は勇者の胸を拳でぶち抜いて殺した、ついてきた魔法使いも神官も武闘家や賢者も同じことだった。俺は五人の人間を殺し、そうしてから門番に死体を始末しておくように命じた。きっと森の魔物の餌にでもなるのだ。そうしてから俺はエアルの反応が気になった、きっと俺に怒ってるなと思った。 「えっと、エアル。ごめん」 「何故、貴方が謝るのです。貴方は自分の街を守っただけです、リュアクス」 「そう言ってくれると安心する、俺は嫌われるかと思った」 「別に嫌ったりしませんよ、少々驚きましたが」 「それじゃ、魔王城に帰ろうか」 「ええ、また私を運んでくれますか?」  俺は喜んでエアルをお姫様だっこして、来た道をひょいひょいっと戻っていく。エアルは俺にしがみついていて、俺はエアルの体温を感じてドキドキした。そうして戻るとまず朝食を食べることになった。いつもどおりの四人で食べる食事だった。 「ああいった勇者一行は時々来るのですか?」 「そうだ、魔王の俺を倒しにな、無駄だって言ってやりたいもんだ」 「魔王様はお強いから大丈夫です、エアル様」 「魔王様は必ず勝つので平気です、エアル様」 「どこの国の勇者だったのでしょう」 「そういえば聞くのを忘れたな、エアルといて少々浮かれていた」 「エアル様にべた惚れなのです、リュアクス様」 「エアル様が大好きで堪らない、リュアクス様」 「わ、私は執務室に行きます」 「それなら俺も行く、待ってくれ。エアル」 「やっぱりべた惚れなのです」 「やっぱり大好きなのですね」  それから執務室でいつもどおり国政について話し合った、今年の方針はほぼ決まっていたから会議もスムーズに進んだ。俺たちは昼食前には開放された。いつも通りの四人での昼食、それが終わったら俺はこう言った。 「また首都を見てまわらないか、エアル」 「ええ、いいですよ」  そうして俺はエアルを手を繋いで首都を見てまわり、それらは以前来た時となんら変わりはなかった。それでもこうして外に出るのは良い気晴らしになった。ここなら執務について煩く言われることも無く。俺は自由に首都を歩くことができた、エアルの手を握って離さなかった。エアルはまた本屋で立ち止まった。本当に本が好きな奴だと思い、俺もいくつか本を読んでみた。ふと気が付くとエアルの姿がなかった。俺は焦って探し始めた、屋根の上に登り周囲を見回したら見つけた。エアルは首都の門に向かっていた。俺は気配を消してその後を追いかけた。 「ああ、海。それに空」  エアルは首都を出て海が見える丘で立ち止まっていた、しょうがないから俺も後ろから姿を現した。エアルは突然現れた俺を見てびっくりしていた、そうしてエアルはまた海と空を眺め続けた。 「なぁ、エアル。俺から逃げ出そうとしたのか」 「…………そうかもしれません、私は花嫁には向いてないようです」 「誰が何と言おうとお前が俺の花嫁だ」 「閨をともにしていなくても?」 「それでも俺の花嫁だ、今だって抱きたいのを我慢している」 「その気になったらでしたね、ご期待には応えられないようです」 「それでもいい、でももう逃げ出すなよ」 「どこに行っても、貴方に捕まるみたいですね」  俺はエアルを抱きたかった、本物の花嫁にしたかったが。エアルの意志を尊重して止めておいた。俺から誰かがエアルを取り上げたら俺は取り戻しに行くだろう、相手が誰だろうが構わん。ズタズタに引き裂いて殺してやる。そう思っていたがエアルには言わなかった、怖がらせたくなかったからだ。そうして俺はエアルの手をとって魔王城までの道のりを歩いていった。 「リュアクス、私が逃げ出したら探しにきてくださいね」 「もちろん、探し出す。そしてきっと取り戻す!!」 「私はどうもふらふら出かけることがありますから、ちゃんと捕まえていてください」 「おう、任せろ。ちゃんと捕まえてお前の部屋に監禁してやる」 「そこまではしなくていいですよ」 「そ、そうか」  そう言って笑うエアルのことを見て俺は好きだなぁと思った。だからエアルの唇にキスしていた、エアルはきょとんとした顔をしていたが真っ赤になった。おお、俺は嫌われてはいないようだな。殴られずには済んだからな。ちょっとずつ、ちょっとずつ、エアルと仲良くなっていこうと思った。だから魔王城に帰り着いたら、エアルの頬にキスをした。エアルは驚いたようだが拒みはしなかった。俺は調子にのって唇にもまたキスをした、真っ赤になったエアルから突き飛ばされたがこのくらいの衝撃は何ともなかった。そうして夕食を食べることになった。 「このステーキは美味いな、何の肉だ」 「牛の肉だそうです、リュアクス様」 「とても良い肉です、リュアクス様」 「本当に美味しいですね」  牛の肉を食べられる者は少ない肉用牛経営をするところが少ないからだ。魔物がせっかくの肉用牛を食べてしまうこともあると聞く、明日執務室でそのことについて話し合ってみようと思った。そうして俺たちは食事も済んだし眠ることにした。 「おやすみ、エアル」 「はい、おやすみなさい……ってキスが長いです!!」 「こうすると良い夢が見れるんだ」 「そうですか、それは良かったですね」  俺は今夜もエアルにお休みのキスをした、しかもかなり長くしていた。そうしてまた夢をみた、夢の中ではエアルが俺にキスをしてくれた、現実でもそうならいいのにと思いながら深く眠った。夢の中で俺はエアルを抱いていた、すると翌日に夢精していた。だから朝から風呂に入って、二、三回ヌイておいた。俺も性欲が溜まってるんだなぁと思った。百年の間に俺も誰ともSEXしていないわけがなかった、サキュバスにはよくお世話になった。でもちょっと油断すると私は魔王様の恋人だとか言いだすのでエアルが来てからは全く相手をしていなかった。俺は風呂に入りながらそんなことを考えていた。

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