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第11話
数日後、例の店に行った。
「まだ無名だが信頼できる」とのことで行った先は外観こそ見るからにアダルトグッズの店だが中は妙に小綺麗で、金髪碧眼の見るからに胡散臭い店主がめちゃくちゃ浮いていた。
「予約していた佐々木だが」
サギがそう言うと店主が一瞬遠い目になって、それからにこやかに「ではこちらへ」と俺達を奥の部屋に案内した。顔に似合わず常識のある奴で良かった。
そう冷静に思えたのも一瞬だった。忘れていたんだけど当然ディルドなんだから俺のを勃起させないといけなくて、どうせなら限界まで勃たせたいと別室でさんざんサギに寸止めされ、その後店主に何枚も俺のの写真を撮られ、それを確認させられ、型をとられ、再度別室でサギに何度も射精させられ、終わる頃には俺は満身創痍になっていた。
もう二度と来ないと思いながら店を出ようとしたら店主がちょいちょいと俺を呼んだので耳を寄せると、奴は呆れた声でひそひそと言った。
「本当は店に来なくても良かったんですよ。家で写真撮って送るなり型をとるなりできますからね。旦那さんも好き者ですね」
「はあ?」
思わずそう大声で言うと不思議そうに見ているサギにつかつかと歩み寄り、背中をぐいぐい押して店から出させる。そのまま車まで行ったあと、口を開く。
「お前、ここに来る意味なかったんじゃねえか!」
そう言うと見るからにサギの目が泳いで妙にすらすらと言葉が出てくる。
「いや、プロに見てもらった方がいいかと思ったんだ」
「本音は?」
「…その方が興奮しました、すみません」
「お前なあ、俺を売る真似はしないって言っただろ!」
「抱かせてないからセーフ、って言い訳は通じないか…?」
「〜っ、まあいいけど!もう二度と人を巻き込むなよ!」
「ああ、十分満足した。あそこは首輪も作っているからまた行くことになるが」
「マジかよ…俺二度とあの店主の顔を見れる気がしねえ…」
「あの店は本当にいい店なんだ。我慢してくれ」
「いや、ってかそれもわざとだろ。首輪先に作ればよかったんだよ」
「確かに…」
「それは素なのかよ!」
そういうわけで俺達は結ばれた。ディルドを本当に使ったかどうかは…秘密にしておこう。
――
佐々木 栄駿
社長就任直後の自己紹介で「気軽に『サギ』と呼んでください」と言って社員達を大いに困惑させた生粋のドM。渡辺用の首輪を買う際、自分のための首輪も渡辺に選んでもらった。
渡辺 一輝
自分の性別を知ったその瞬間から世界を冷めた目でしか見られなくなったβSub。そのせいで一周回って佐々木への恨みはほとんど無く、愛されている喜びがすぐに上回った。会社に連れて行ってもらった時、佐々木が社員達に「サギ社長」と呼ばれているのを見て頭を抱える。
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