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第128話
湯浴みの準備が出来たとコンラッドがやってきて、ノアリスはカイゼルに抱かれたまま、湯殿に運ばれる。
いつもなら肌衣を着たまま湯船に浸かるノアリスだが、もう裸は見られているから、グッと服を掴むと緊張しつつもゆっくりと脱いでいった。
「! ノアリス、無理に脱がなくていい」
「ぁ……で、でも、もう……カイゼル様は、見たで、しょう……? 他の人がいたのなら、難しいけれど、カイゼル様、だけだから……」
「……そうか」
カイゼルの目が柔らかく細められる。
彼の前でなら、恥ずかしいけれど、嫌ではない。
裸になったノアリスは、カイゼルに抱かれ湯船に向かう。
その時、彼の背中に回していた手が違和感を拾った。
しかし、あまり気にすることなく、いつものように湯船に浸かり、カイゼルによって髪と体を丁寧に洗われる。
ふと目が合って、恥ずかしさからそっと視線を逸らしたノアリスだったが、またすぐに戻して目を合わせると、照れたように微笑む。
それがあまりにも可愛らしく、カイゼルはつい顔を寄せて口付けを交わしていた。
「愛らしいな……」
「ぁ……恥ずかしい、です……」
キュゥっと赤くなったノアリスは、全てを洗い終えて再びカイゼルに連れられ湯船を出た。
「──さあ、ここで少し待っててくれ」
「はい」
ノアリスの支度を終えたカイゼルは、今度は自身の支度を進める。
その様子を見ていたノアリスは──彼の広い背中に広がる真新しい傷に気がついた。
「ぁ……カイゼル様……」
「どうした?」
「……お背中に、傷が……。あっ!」
その傷を見て、すぐにわかった。
それは行為の時、彼の背中に手を回した自分がつけたものだと。
「ぁ、ど、どうすれば……私……っ」
触れていいものかわからず、手が宙に浮く。
あの時、自分はどれだけ彼に縋っていたのか。それをしっかりと確認してしまい、苦しくなる。
好きな人を傷つけてしまった。
「ノアリス」
「っ、は、はい」
「……そのような顔をしなくていい。これは俺にとっての勲章だ」
そう言って、何でもないことのように笑う。
「そなたが、俺に縋ってくれた証だ」
「っ……」
「これは俺だけが貰える褒美みたいなものだ。ノアリスが傷つくことはない」
ノアリスは彼の言葉に驚き、そして恥ずかしさと嬉しさとで顔を赤らめ、静かに俯く。
はらはらと落ちた金髪を、カイゼルの優しい手がそっと梳いてくれたのだった。
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