127 / 128

第127話

「ん……」  いつの間にか眠ってしまっていたらしい。  ノアリスは薄く目を開けて、体を動かそうとし、温かい体温に包まれていることに気がついた。 「……ぁ、カイゼル様……」 「……起きたか」  抱きしめてくれていたのは愛しい人。  顔を上げると慈しむようなエメラルドグリーンがあった。 「どこも辛くないか」 「ぁ……」  控えめに頷いたノアリスに、カイゼルは「よかった」と言って額に唇を落とす。 「体は拭ったが、後で湯浴みをしよう」 「はい……。……カイゼル様……あの、」 「ん?」 「わ、私ばかり、良くしていただいて……カイゼル様は、よ、良かった、ですか……?」 「!」  目を見張ったカイゼルは、すぐに目尻を柔らかくした。 「ああ。とても」 「……よかったぁ」  安心したように微笑んだノアリスに、胸がキュンとする。  そっと金色を撫で、手を取ると真白な手の甲に唇で触れる。 「怖かっただろう。……受け入れてくれて、ありがとう」 「わ、私、も……め、面倒なのに……丁寧にしてくださって、ありがとうございました」 「面倒だなんて思わないさ。……今が戦時中でないのなら、ずっとこうしていたいくらいだ」 「! ……ふふ」  ぎゅぅっと抱きしめられ、幸せだった。  彼の背中に手を回す。  ノアリスもまた、ずっとこうしていたいと思ったのだけれど、そんなにも悠長にしている時間はない。  起き上がった二人は軽く服を着て、カイゼルが部屋の扉を開ける。  少し離れたところにコンラッドが居て、カイゼルは彼を呼んだ。 「何も起きなかったか」 「はい。何も」 「湯浴みの準備を」 「かしこまりました」  扉を閉めて振り返ると、ノアリスが乱れた髪を手櫛で整えていた。 「ノアリス、こちらに」 「ぁ……はい──わっ!」 「!」  ベッドから移動しようとした彼が、歩き出そうとしてバランスを崩した。  離れていたからカイゼルの手は間に合わず、床に転んだノアリスに駆け寄る。 「大丈夫か」 「……お恥ずかしい……」 「そんなことはない。どこかぶつけたりは?」 「いえ……でも、なんだか、下半身に力が入りにくくて……」 「それは……仕方がないさ。すまない。俺が運ぶべきだったのに」  そっと抱き上げたカイゼルは、ノアリスを椅子に座らせた。  足や手に怪我がないか入念に見て、何もなっていないことを確認する。 「湯殿までは俺が運ぶ」 「え……で、でも、それは、恥ずかしい……」 「俺は誇らしい」 「……」  嬉しそうにする彼。  その笑みにノアリスは胸をドキッとさせ、恥ずかしさに俯いた。

ともだちにシェアしよう!