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エピローグ 灰は、白く紅く
街から兵士が消えた。1週間後、放棄された戦場に、ある女が帰ってきた。
市街の一角にあったその小さな療養所は、とっくに破壊され、原型を留めていなかった。しかし連合軍の手助けで、いくつかの瓦礫が撤去されていく。
まだ辺りに煙が燻る中、女はかつての診療所へ、まだそこに残っているはずの医薬品を取り戻すために、足を踏み入れた。
爆撃に晒されたそこは、薬瓶も四散していた。もちろん生者の気配もない。灰色の瓦礫の中には、何も残されていない……そう信じた矢先、女はある2人の兵士を見つけた。
イギリス兵と、ドイツ兵。色の違う軍服に身を包んだ男たち。
2人は、互いに寄り添うように折り重なり、静かに息絶えていた。
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