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第5話

「イギア帝国の皇太子、ダリアン殿下にイクス王国の王女が嫁ぎ同盟が結ばれたと聞きました。イギア帝国には黒の騎士団という向かうところ敵なしの最強の精鋭部隊がいると聞きました。もし今、攻めてこられたらこの砦はおそらく三日と持たないでしょう。あちこち修繕が必要なのに国からの資金援助は一切ない。地域住民たちが逃げ込んできて、籠城戦になったとしてもアルさまのお兄さまたちからの援助や援軍はない。消耗戦になりなんの罪もない住民たちが犠牲になります。アルさま、それだけは避けなければなりません」 「だからといってサクが敵国に行く必要はないだろう」 「大丈夫です。条件を出しますから」 僕はアル殿下の前にすっと出た。 「セドリック殿下、二年待っていただけませんか?あと二年でアルさまは十八歳になります。許嫁の侯爵家のお嬢さまと結婚します。それまでアルさまのお側でお世話をさせていただきたいのです」 「二年も持つか?いや持たないだろう。なんでもない。独り言だ。気にするな。分かった。手ぶらでは帰れないからこれに署名してくれ」 お付きの方が丸めた紙を机の上に広げた。イギア帝国の文字だ。何が書いてあるか分からない。 「婚姻届だ。きみがほんものの聖女だと気付いたとき彼らは手のひらを返して、追放したきみとアル殿下を呼び戻すはずだ。俺の妻になれば帝国を味方につけられる。きみが大事にしているアル殿下と住民たちの命と生活は保証される。悪い話しではないだろ?」 「聖女は姉です。僕にはそんな力はありません」 「きみは天然なのか、わざとなのか、面白いね」 セドリック殿下がクスクスと笑い出した。 婚姻届にサインをしてお付きの方に渡すときらびやかな文箱の中にしまった。

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