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第4話

アル様がまさかそんなことを思っているなど露知らず。助けてくれた恩に報いるため僕は誠心誠意アル様にお仕えしていた。お祈りの仕方も姉がしていたのを見よう見まねで覚えた。 「ユフ、最近アルさまのご様子が変だと思わない?」 「やっと一人で寝るようになりましたか?」 「いや、そうじゃなくて」 アルさまは一人では寝れないと夜中に僕のベットに潜り込んでくる。起きるまでずっとしがみついている。お風呂も一緒じゃないと駄々を捏ねてお付きの者を困らせている。 「四六時中サクにべったりで、サクの姿が見えないだけで大騒ぎして、そろそろサク離れをしてほしいのが俺の本音だが。実は帝国の第二皇子、セドリック殿下からサクを妻にもらいたいと書状がきた」 「僕は男です」 「知ってる。見れば分かる」 「ヘルマプロディトスの生まれ変わりだから?」 「それは本人に聞いてくれ。今、応接間にいるから」 「え?今ですか?」  「我が国の民が三度も助けられ直接会って礼が言いたいと何度も手紙が来ていたんだ。殿下はその度に断っていたが、諦めの悪い皇子さまでサク本人に会って礼を言って、プロポーズしてもダメなら諦めると護衛もつけずに単身で乗り込んできた」 「お会いしなかったら?」 「会えるまでずっと居座るだろうな」 「お断りしたら?」 「外で待機している帝国軍が攻めてくるだろうな」 「つまり拒否権はない、ということですか」 「まぁ、そうなるな」 ユフとそんな会話をしていたら扉が勢いよく開いてアルさまと黒い甲冑を身に纏った背の高い男性が大股で入ってきた。背の中ほどまである焦げ茶色の髪を結い、目は空と同じ青い色をしていた。 アルさまが通せんぼうするように僕の前に立ち塞がった。 自分より二十センチ以上も背の高い大人の人に対してアルさまはまったく動じることはなかった。金色の髪が風でさわさわと揺れて、亜麻色の目には確固たる決意がみなぎっていた。

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