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第3話
春なのに大雪に見舞われた四月。クレイグ王国とイギア帝国の国境にある広大なミラー湖で観光船が天気の急変で沈没したとき、サクは敵も味方も関係ない。目の前で助けを求める民を助けないほうがよほど鬼、野蛮人だ、そう言って陣頭指揮を取り大勢の敵国の民の命を助けた。
雨ばかり降っていた六月。国境に位置するイギア帝国側のメイソン村で崖崩れが起きたときもサクは国境を越えて真っ先に駆け付けて率先して炊き出しを行い、多くの怪我人の手当てにあたった。
頻発する地震と日照り続きだった八月。メイソン村の井戸水が干上がってしまいサクの祈りの力で井戸水がまた出るようになった。
愛するサクを独り占めしたくて、なるべく表に出さないよう、隠しておきたかったのに。
本当は部屋に閉じ込めておきたかったのに。
相次ぐ天変地異に、僕の助けを待つ人たちがいる。サクが行きたいと言えば否が応でも行かせるしかなくて。
そして、一番恐れていたことが起きた。
実は帝国にはサクと同い年の未婚の皇子がいる。前の年に結婚しない理由は同性が好きだからと堂々と公言して、同性婚を合法化すると、法律まで変えてしまった。よりによってその皇子に見つかってしまった。
「ユフは第二皇子セドリック殿下を知ってるか?」
「もちろんです。まだお若いのに軍事戦略、戦闘技術に優れており、最強部隊である黒の騎士団を自ら率いておられるお方です。政と王位継承には興味がないとおっしゃられていて、国境のパトロールと、魔物討伐のため遠征ばかりしているみたいです。四歳年が離れている皇太子のフィリップス殿下ととても兄弟仲が良いと聞いています」
「私の兄弟とはまるで違うな」
思わず本音が漏れてしまった。
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