7 / 83

第7話

「十日に一回は来るから、アル殿下に何を言われても反論することが出来ないらしいよ」 「ユフ、あの人たち誰だか聞いてる?」 「あれが例の黒の騎士団だ」 「戦争をはじめるの?」 「はじめないよ。彼らは常に主に忠実だからね。セドリック殿下が、あの中から一人、護衛を選べって」 「僕が?なんで?」 「直接本人たちに聞いてみたら?」 「怖くて近寄れない」 「兜を取って下さいって頼んでみたら?」 「取ってくれるかな」 おっかなびっくりそぉ―っと黒づくめの集団に近付くと、 「サク妃殿下」 一斉に兜を取ると、毅然と頭を下げられたから驚いた。 「私たちはセドリック殿下の直属の部隊です。サク妃殿下、何なりと申し付け下さい」 「は、はい。よ、よろしくお願いします」 何事も最初が肝心。僕も慌てて頭を下げた。 「サクでいいです。そんな妃殿下なんて……男ですし」 「それは殿下に申しあげてください。サク妃殿下、この中から護衛を好きなだけお選びください」 あれ、確か一人のはずでは。聞き間違いだったのかな。 「こんな辺鄙な地まで好き好んで誰も来ませんし……才能と将来性のある若いみなさんをこのまま埋もれさせる訳にはいきません」 「私の家族は観光船沈没事故で、サク妃殿下に命を助けてもらいました。姉の子どもは赤ん坊で助け出された時はすでに息をしていなかった。冷たくなっていたのにサク妃殿下は諦めず、ずっと温めてくれて、それで息を吹き返したと姉から聞きました。家族全員無事に帰ってこれたのもサク妃殿下のお陰です。いつか恩返しがしたいと思っていました。どうか私たち兄弟に妃殿下の護衛をさせてください」 顔がそっくりな二人が同時に手を挙げた。

ともだちにシェアしよう!