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第35話

ジュリアンさんが二人のうしろに立っていたから心臓が止まるんじゃないかそのくらい驚いた。気配が全然しなかったからなおさらビックリした。 「新しい聖女は王宮の外にほとんど出ないから顔を知る者は少ない。大怪我をした兵が担ぎ込まれても顔をしかめドレスが汚れるとなにもしない。私は疲れているのよ。そんなの他の者にやらせたらが口癖。密偵から入ってくるのは悪い話しばかりだ。我が帝国とイクス王国の合同軍でクレイグ王国に攻め入り属国にすると閣議で決まった直後にあの観光船の沈没事故が起きた。ミラー湖一帯の土地を治める領主たちやサクさまに家族や親戚を助けてもらった貴族たちがごぞって反対に回った。グレーンスト―ン家とデューク・ヒューベルト家ももちろん反対しました。だからクレイグ王国に攻めいることはなかった。実はサクさまが断罪されたあの日、セドリック殿下もいらっしゃったんですよ。新しい聖女の誕生と、王太子殿下との結婚を祝うための祝賀会に招かれ、陛下の名代として参加していたんですよ。もしグラシオ公爵閣下が貴方を助けなかったら帝国にあなたを連れ帰るつもりでいました。セドリック殿下は一目見て聖女が偽者で、本当の聖女はあなただと見抜いてました」 ジュリアンさんにじっと見つめられた。

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