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第41話

「あんたたち貴族さまには一生分かるまい。家族や親戚を殺され、泥水を啜り飢えに喘いだ俺たちにはもう怖いものなんてないんだ」 「男爵がまたここの領主になるなんてまっぴらごめんだ」 「領主さまとサクさまが来てくれてやっと人並みの生活が送れるようになったんだ」 「領主さまは俺たちをモノでなくちゃんと人として見てくれる。領主さまもサクさまも困っていることはないか?必要なものはないか?そう聞いてくれるし、いつも気にかけてくれる。怪我をすればすぐに来てくれてあっという間に治してくれるんだ。サクさまこそほんものの聖女様だ」 「よき領主と聖女に巡り会えたのですね」 「だからこそ俺たちがサクさまをお守りしないとならないんだ」 「なるほど。よく分かりました」 スフィルさんの仲間の人が合図をすると、どこに隠れていたのか黒衣の騎士団が一斉に姿を現した。全身を覆う金属板で構成された黒光りする鎧を一目見るなり 嘘だろ、ぎょっとする騎士団。 「なぜ帝国の騎士団がいるんだ?」 「それはサクさまがセドリック殿下の后だからですよ。本当になにもご存じではないんですね。それもそうですよね。あなた方は私たちの主であるサクさまを殺そうとしたのですから。興味なんてこれっぽっちもありませんものね」 「あやつが主だと……」 騎士団の顔色が変わった。 「子爵にすぐに連絡を」 「私たちを倒してからにしてくれませんか?私たちに勝てればの話しですけどね」 にっこりと微笑んだ。

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