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第83話

「サクにずっと会いたかったんだからしょうがないだろう」 ジュリアンさんは体を離すと、僕の右手をそっと持ち上げて手の甲に軽くキスをした。 「スフィル、ゼオリク、鞘から手を離せ」 僕の後ろにいる二人をチラッと睨み付けた。 「義兄上この際ですから申し上げます」 「言いたいことは分かっている。でもな私の妻はサクには焼きもちを妬かない。残念だったな」 ふふっと不適な笑みを浮かべるジュリアンさま。それを見たゼオリクさんが、 「兄さんそういえば聞きました?」 スフィルさんに話を振った。 「何をだ?」 「グレーンスト―ン公爵家からもサクさまの護衛を一人出したいと殿下に申し出たそうですよ」 「子息は義兄上だけ。義兄上は王室警備隊としてエリオット殿下のお側から離れるわけにはいかない。誰もいないだろう」 「いるじゃないですか一人だけ。適任者かは微妙ですが」 「あぁ~~彼か」 ギクッとするジュリアンさん。 「義兄上とは犬猿の仲の従兄弟がいるんですよ。そうですよね公爵閣下?」 「良かった。私の存在自体忘れられていると思っていたから。デュークばかり狡い。同じ公爵家なのに……とまぁ、殿下に我が儘を言ってみたんだよ。グラシオ卿、あとで挨拶に伺わせます」 「別に構いませんが」 アルさまも寝耳に水だったみたいで眉間に皺を寄せていた。

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