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第15話

 あれから一週間が経ち。  俺たちは互いの両親に結婚したい人がいるということをそれぞれ伝えた。  両親はとても驚いていたけど、相手がルドヴィックだと知るとすぐに納得。やっとくっついたかと言われてしまった。 「ルドヴィックくんがノアムに好意があるのは、明らかだったから」 「……そうなの?」 「うん。あんなに愛おしいって視線を向けられて、気づかないのはお前くらいだよ」  母は大爆笑していた。  この人は、他人の前では大人しいけど、実際はかなりはっちゃけた人だ。  父は母のこんなところが好きみたいだけど。 「――にしても、結婚するっていうことは、孫も産まれるのかぁ」 「気が早くない?」 「ルドヴィックくんにとっては気が早いわけじゃないみたいだけど」  母の視線が俺の後ろに向いた。  つられるように振り向くと、そこにはいい笑みを浮かべたルドヴィックがいる。  母はひらひらと手を振った。 「ルドヴィックくん。ノアムを頼むよ」 「はい」 「可愛い孫も見せてね」  それだけの言葉を残して、母は立ち去った。  俺がぽかんとしていると、ルドヴィックが先ほどまで母が座っていた椅子に腰を下ろす。 「……なぁ、ルドヴィック」  恥ずかしくて視線がさまよう。ルドヴィックはなにも言わずに俺の言葉を待っていた。 「お前、子供すぐに欲しい?」  小さな声で問いかけると、ルドヴィックが「うん」と迷いなくうなずいた。 「だって、ノアムの子だよ。絶対可愛いじゃんか」 「……でもさ、ほら、いろいろと」  男が妊娠出産するためには、いろいろと準備が必要だ。  そのため、すぐに――とはいかない。 「俺、準備ができるまでは待つけど」  ルドヴィックが眉をひそめた。 「それとも――」  俺の頬にルドヴィックの指が触れた。親指で頬を撫でて、笑う。  色気たっぷりの艶やめかしい笑みだった。 「ノアムは準備期間をすっ飛ばして、妊娠したいの?」 「っ――」  どうしてそうなるんだろうか。  ……まぁ、ちょっとは、その。思ってるけど。 「図星だね。俺は子供欲しいけど、別にノアムと二人きりでもいいんだよ」 「……俺がいやだよ」  拗ねたように顔を背ける。 「ルドヴィックのこと、信じてないわけじゃないよ。けど、やっぱり――お前がどこかに行くんじゃないかって、思うから」  俺は顔立ちだってきれいじゃないし、可愛くもない。  ルドヴィックがほかの人間の元に行くんじゃないかって不安が常にある。 「子供出来たら、お前はずっと俺の元にいてくれるんじゃないかって思うんだよ」  これじゃあ女々しいし、重すぎる。  自覚はしてるけど、ルドヴィックに捨てられたら生きていけないのだから、仕方ない。 「ノアムは馬鹿だな。俺がお前の側からいなくなることなんて、ないよ」 「……わかんないじゃん」 「じゃあ、閉じ込めてもいいよ。俺のこと縛り付けてもいいよ」 「……馬鹿か、お前」 「俺は馬鹿だよ。ノアムに対して限定でね」  本当に、こいつはああいえばこういう。  いつも俺は言い負かされて――気づいたらこいつのペースにはまっている。  けど、そんなのも悪くない。俺はルドヴィックが好きだから。 「愛してるよ、ノアム。――ずっと俺と一緒にいようね」 「――うん」  手を重ねて、指を絡めあう。  俺たちは今日までも、今日からも。――ずっと、一緒だ。 【END】

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