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第5章:満月の別れ 第3話③

「んっ……」  大きく開かされた脚の付け根。熱い切っ先が押し当てられる。それだけで括約筋はヒクリと期待にわなないた。腰の奥がウズウズする。早く欲しくて堪らない。根本へとかけて埋められた彼だけが持つ凹凸。その刺激を思い出し、カァァと頬が熱くなる。  鷹臣が少しずつ腰を進めてきた。押し広げられていく括約筋。大きく口を広げ、彼の巨大なイチモツを咥え込んでいく。  普段なら焦らす時以外は早々に突き込まれることも多いというのに、今日は本当にゆっくりと入り込んでくる。体を慮ってくれていることは分かるが、正直じれったい。もっと深い場所にガツガツと力強く押し込まれたい。あられもない声を上げて、この人に翻弄されたい。  でも、そんなことを言うのは恥ずかしい。いつもは言わされているという体で酷い痴態を見せているものの、こんな風に優しく抱かれては言うに言えないではないか。  少しずつ埋め込まれていく陰茎。真珠の凹凸が直腸を擦っていく。気持ち良い。それはいつもと何ら変わらない。  しかし、もっと深い快感を知ってしまっている体には物足りない。 「たか、おみさん……」  鷹臣の上半身に抱きついた。この胸の中を席捲する想いが言葉にせずとも伝われば良いのにと思いながら。  キュッキュッと何度も強請るように後孔を締める。その度に鷹臣の性器の凹凸を更にリアルに感じる。それだけでも体は甘くイってしまう。 「何だよ、今日はやけに誘ってきやがるな」  耳元で囁く低音にもゾクゾクする。鷹臣の声は普段も低くてカッコいいとは思うが、情事の際には更に淫靡さが加わってくる。それだけで耳から犯されている気になってしまう。  ゆっくりとした挿入ながらも先端が結腸へと辿り着いた。奥が期待してしまう。この剛直に刺し貫かれるその時を。  それなのに、鷹臣はそこからまた引き抜き始めてしまった。S状結腸の柔肉が明らかにガッカリする。  この剛直は最奥まで辿り着いてはくれないのか。満足させてくれるのではないのかと喚いていた。  腰が勝手にクイクイと動いてしまう。もっと激しく求めてほしい。こんな穏やか過ぎるセックスなんて鷹臣らしくもない。  先端だけを残し、竿が引き出されてしまった。中が切なくて堪らない。中途半端に煽られ、期待させるだけさせておいて、こんな生半可な刺激で満足しろだなんてあんまりだ。  鷹臣の腰に脚を回す。引き寄せるように力を込めると、眼前の男がニィと笑った。 「病み上がりの奴に無理強いするほど俺は鬼畜じゃねぇんだけどな」  プゥと頬を膨らませた。いつも散々貪るだけ貪っておいて、こんなことを言うなんて。  これでは、セイルの方が淫乱みたいな気がしてしまう。 「……私、鬼畜な人も好きですよ? 鷹臣さん限定ですけど」  ポソリと呟く。あまりにも恥ずかしすぎて視線を泳がせてしまう。  プッと上から吹き出す声が聞こえてきた。顔を真っ赤にさせながらチラリと一瞥した鷹臣は彼らしくない柔らかな笑みを湛えていた。 「大切にさせろって言ってんだよ。ばーか」  額にキスが降って来た。優しい触れ方。キュンと心臓が鳴る。  ギュッと抱き着いた。もう、顔を見られてなんて言えない。 「十分、大切にされてますから! …だから、もっと奥まで鷹臣さんを下さい……あっ!」  一気に突き上げられる剛直。結腸にズンと響く。鷹臣はセイルの脚を抱え直すと、腰の動きを速めてきた。 「あっ! ああっ!」  与えられる快感に身を捩らせる。ゴリゴリと襞を擦って行く凹凸の刺激。それに、注挿される度にいくつもの真珠が前立腺を通過する。それだけでも得も言われぬ快楽に喘ぐが、それ以上の刺激を求めて直腸が鷹臣を締め付けていた。 「ああっ! ん、ああっ……ひぁんッ!!」  ズボリと抜かれた結腸の奥。S状結腸の柔肉に突き刺さる肉の熱さ。待ちに待ったその時に全身がわなないた。直腸が歓喜に震える。それまで以上に締め付け、鷹臣へとその悦びを伝えていた。  求めていたものを与えられる幸せに打ち震える。今、繋がっている下肢が愛おしくて堪らない。二人で一つであると実感できる瞬間だ。  ずっとこうして共にありたかった。もう、これが最後だなんてやっぱり信じられない。これから先の長い生の中、この思い出だけを心の支えにして生きていくのだろうか。  ……嫌だ。もう知らなかった頃になんて戻れない。  ポロポロと零れる涙。こんな顔を見せてしまえば、嫌がっているように勘違いさせてしまう。  それなのに、止めようと思っても止められない。代わりとばかりに鷹臣に見られないようにと首へと回す腕に力を込めた。 「無理、してねぇか?」  ブンブンと首を横に振る。鷹臣の舌が目尻の涙を吸ってきた。柔らかく温かい唇の感触。それだけでも大切にされていると十分感じられる。  抱き締められながらもズンッと強く突き上げられた。頭の中が快感一色に染まる。 「たかおみさん、もっと……もっと、いつもみたいに……」  最後なのだから。激しく刻みつけてほしい。九条鷹臣という人間を。  長い生の中で忘れたくなったとしても、絶対に忘れられないように。  セイルに強く抱き締められながらも鷹臣は器用に腰を振り、奥の奥まで穿ってくれる。体の中を好きな人で埋められる幸福。快感から来る涙と嬉し涙が混じる。 「ああっ、んぁ、……たかおみさん、たかおみさん!」  キスを強請れば、熱い舌が入り込んで来た。求められる口づけにうっとりする。上下の口で鷹臣を受け入れ、その味に陶酔した。長い舌に絡め取られるセイルの舌。口の中からもクチュクチュと水音が聞こえてくる。淫靡な音でも犯され、頭の中は鷹臣だけになり果てた。  こんなに好きな人と共にあれる幸せ。離れ離れになってしまっても、この人と出逢ったことを運命と言わずして何と言おうか。出逢うべくして出逢った大切な人。  ただ、それが別れるのも運命だったと言われれば、あまりにも心が苦しくて仕方ない。  だからと言って、逢えなくても良かったかと言えば、そんな風に思ったことはない。  この人と出逢えたからこそ知ったことの方が多すぎたから。 「んん、んっ……ふっ、ん……」  睾丸の中が騒めき始める。三度目の吐精が近い。腰の奥が射精欲で疼いている。ドチュドチュと音をさせながら打たれる奥の柔肉。快楽に流す涙の方が多くなってきた頃、我慢できないくらいの射精欲に襲われる。 「んんんんっ、……んーっ!」  三回目の吐精は鷹臣とセイルの腹を濡らした。 「くっ……」  最奥まで突き込まれ、熱い粘液をかけられるS状結腸。その熱さにすらも軽くイってしまう。  互いに達しても、口づける唇は離れなかった。

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