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季節外れの台風-13

「えっ? そうなの? ……なんで? えっ」  母さんが口を開けたまま固まり、だんだんと眉間にシワが寄っていく。 「あんた、何かしたの?」 「いや、俺が何かしたとかではなくて、むしろ……」 「別れたんだ、良かった」  母さんの問いに答えきる前に、小春が俺の話を遮り、予想外の言葉を漏らした。  別れて良かったって、どういうこと?  その言葉にさらに驚く母さんと、それから俺を順番に見ながら、小春が腕を組む。  何を言われるのだろうかと構えると、そんな俺を察してか、小春が再び俺に抱きついてきた。 「……私ね、あの人苦手だったんだよね。お母さんも航兄も見る目ないなって、ずっと思ってたよ。最初に挨拶に来た日からずっと、なんか無理って思ってた」 「え?」 「航兄が華さんのこと好きなのはよく分かってるからずっと言えなかったけど、私から見て華さんから航兄への矢印があまり感じられなかったんだよね。最初は勘でしかなかったけど。急に別れたって、大きな原因はあの人でしょ?」 「航大、そうなの?」 「……浮気、された」 「えっ」 「ほうらね。やっぱりね」  口を押さえた母さんが「華ちゃんが浮気……、華ちゃんが浮気……」と繰り返し、それがまた俺にダメージを与える。

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