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聞いてしまった責任-18
翼の手が俺のベルト部分にかけられ、カチャッと響いた音に視線を下すと、反応している自分のそれが視界に入ってきた。
……何で?
それと同時に、俺よりもさらに反応している翼のそれが目につく。
「航大……」
「待って、待って、まじで。……翼、無理、無理だって」
何も考えられなくなる刺激とは違い、翼の大きくなったそれが、俺を現実へと引き戻す。
「……さすがに最後までしないよ。そこには触れないし」
じゃあベルトを外すなよ、とそう思って確認すると、翼の手がベルトに触れているだけで、外れそうにすらなっていなかった。
「これで分かった?」
翼は最後に俺の唇にキスをすると、自分の横へと俺を下ろし、それから立ち上がった。
反応している自身を見て、ため息をつき、それから俺に「ごめんね」と言って、帰宅時に床に投げ捨てた鞄を手に取る。
「……翼?」
「無理やり押しかけて、航大の生活をぐちゃぐちゃにしたくせに、こんなことを言うのは許されないかもしれないけど、俺なりにこの生活を大事にしたかったんだよ」
俺に背中を向けているから、翼の表情は確認できないけれど、それでも声が震えているのは分かるし、何より今にも出ていきそうな雰囲気だ。
「翼……!」
ソファから立ち上がり、翼の肩を掴んで振り向かせると、咄嗟に翼が顔を覆った。
はっきりとは見えないけれど、目元には涙が光っている。
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