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聞いてしまった責任-19

「……どうしたんだよ」 「どうしたって、俺、散々やったじゃん」  それは否定できないけれど、でも俺が最後にやめてと言ったときには聞いてくれただろ? 「そうだけど……。出て行くのか?」  翼の手首を掴むと、顔を覆っているその手をどかした。  やっぱり泣いていて、ぼろぼろと涙が頬を流れている。  それを見ていると、どうしてか胸が苦しくなった。 「出て行くしかないじゃん。航大はもう、こんなことをした俺と暮らせないだろ」  さっきまで俺を圧倒していた翼が、なぜたか小さく見える。  散々なことをしておいて、今は肩を震わせて泣いているなんて、やっぱりガキじゃん。 「……何で暮らせないの?」 「何でって? 本当にバカじゃん。俺はなかったことにしてって言えないよ」 「なかったことにはできないけど、でも……」  俺だって何もなかったかのように振る舞うことはできないけれど、でもどうしてか、翼に出て行ってほしいと、そういう考えが浮かばない。  これがどういう意味なのか、それを考える余裕も、翼に伝える余裕もないけれど。  でも踏みとどまっていた翼を煽ったのは、彼の言う通り俺かもしれない。  全てを知った今なら、何があそこまで翼を刺激してしまったのか、理解できる気がする。 「……俺は、もっと欲が出ると思う。航大を好きな気持ちは止まらない」 「欲が出たらどうなるの?」 「航大に、俺のことを好きになってもらえるように頑張ると思う。このままじゃ終われないし」

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