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どうしてこうなった-7

 どんなに伝えても、華には届かない。俺の話聞いているようで、全て流し、自分の言いたいことだけを俺にぶつけてくる。  些細な幸せ、日常こそが大切? それをいらないと捨てて消えたのは自分なのに?  ようやく自覚できたとして、どうしてそれをまた俺と大切にしていけると思ったんだ?  行き場のない感情をどうにも処理できず、俺はテーブルを思い切り殴った。  その音に、華がびくりとするけれど、涙は止まることなく、俺に向かって飛びついて来た。  予想外のことにバランスを崩し、カーペットの上に倒れ込む。 「華、やめろ! 離れろ!」 「もう二度と航大を裏切らない! 信頼してもらえるように頑張るから!」 「そんなことしなくていい! 俺は華とやり直す気なんてないから。もう遅いんだよ、終わってるんだよ!」  浮気発覚直後に、こんなふうに泣きつかれたら揺れたかもしれないけど、今の俺の気持ちは一ミリも動かない。  頭の中は翼のことでいっぱいで、早く華に立ち去ってほしい、そして二度と顔を見せないでくれ、とそればかりだ。 「航大! どうして、もうダメ、なのおっ……」    俺に抱きついて泣く華の肩を掴み、ぐっと押したとき、リビングのドアが開いて、翼が帰ってきた。 「翼……!」 「あ、邪魔してごめん。スマホを取りに来ただけだから」  取り乱すことなくそう言った翼は、諦めたような目をしていた。

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