149 / 186
どうしてこうなった-6
勝手に部屋の中を漁られなくないからと、俺は渋々立ち上がり、華のいるリビングへと向かった。
大きめの家具は華のときと変わってはいないから、懐かしいねとテーブルを触る。
俺にとってはもう、この家は翼との思い出しかないから、懐かしいねと触れられることに反吐が出そうだ。
こんなことならお金をケチらずに、すべての家具家電を捨ててしまえば良かった。
「私のことが忘れられなかったから、またこうして会えるかもと思って、引っ越さずにここにいてくれたの?」
「そんなわけないだろ、変な考えは捨てろ」
吐き捨てるように言えば、華の目に涙が浮かんだ。
付き合っていた当時は、華が泣くと可哀想で、どうにかできることはしてあげたいと尽くしていたけれど、今では何の感情もわかない。
翼のことが好きだからとか関係なく、本当に華に対する気持ちがなくなったんだと再確認できた。
「で? 何の用? 俺はもう、この家に華との思い出は何もないし、どうでもいい過去なんだけど」
「ひどい……! 私はやっと、航大の大切さに気づけたんだよ?」
華の目から、涙がぼろぼろと流れ出る。どこまで俺をバカにすれば気が済むんだよ。
「……ひどい? ひどいのは華だろ。先輩とうまくいかなくなった? 結婚に対して焦り始めた? どんな理由であれ、俺には関係ないことだね」
「勝手だよね? だから、私に怒ってるんだよね? 私が悪いのは分かってるの。でも結局、些細な幸せ、日常こそが大切なんだってようやく気づいたの」
ともだちにシェアしよう!

