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どうしてこうなった-9
あまりしたくはなかったけれど、連絡がつかないから仕方ないと、俺は翼のバイト先に迎えに行くことにした。
店内は狭めだけれど、平日でも繁盛している居酒屋なのもあって、閉店時間が遅かったし、翼のシフトも分からないままだったけれど、一か八かで職員通路の扉の前で待つことにした。
23時を過ぎたところで、ようやく暖簾を片付けにきたスタッフがいた。後ろ姿から翼でないことが分かり、俺はまた扉の前に戻るとそこに座り込んだ。
しばらくして扉前が若めの声で騒がしくなり、俺が翼を怒りながら連れ帰った日のメンバーかもしれないと、耳を澄ませる。
「翼、最近シフト入れすぎじゃない?」
「あー……事情があって、大学の友人の家に泊めてもらってるんですけど、俺が家にいると迷惑になるかもしれないから、できるだけ働きに出ようって思ってて」
翼がここで嘘をつくとは思えないし、何より迷惑をかけないようにとバイトばかりしている翼を容易に想像できるからこそ、この話は本当なんだと分かった。
誰の家かは変わらず不明なままだけれど、その話をここでできるってことと、誰々の家ですとバイトメンバーの前で言わないことからも、大学の友人宅であることは間違いなさそうだ。
「へえ、何でまた。あの保護者と喧嘩でもしたの?」
「……まあ、そんなもんです。というか、追い出されてしまうかも」
「はあ? お前何したんだよ」
前に翼が俺のことを伝説になっていると話していたけれど、こうして保護者として認知されている事実を知ってしまうと気まずい。
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