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どうしてこうなった-10

「お疲れ様! 俺、先に上がります」  誰かが出て来る気配がして、俺は少し離れたところに移動した。  不審者の様な動きをしているけれど、翼とふたりで話せるタイミングを狙わなければ、取り乱してしまったときに翼に迷惑がかかってしまいそう。  ひとり出てきた後、しばらくしてドアが開くと翼が見え、他に誰も出てきませんようにと祈ったにも関わらず、こういうときに限って翼はひとりではなかった。  待ってよと、すぐ後ろから出てきたのは、以前翼に酒を飲ませようとした子だった。翼が松山先輩と呼んでいた人だ。  あれほど俺が触れられるなと言ったのに、ぼーっとしている翼は簡単に腕を組まれている。   興味がなさそうにしていて、松山さんが一方的に話しかけていたけれど、誰がどう見ても彼女は翼に気があるし、だからこそ距離を考えろよと話していたのに。  スマホを見ながら歩いていた翼が、急に立ち止まり、画面を見たまま固まっている。  もしかして俺のメッセージか?  そう思ってスマホを開くと、俺のメッセージの横に既読の文字が付いていた。  何か返事をくれるかもしれない。  期待しつつ、少し離れたところから横顔を見ていると、松山さんは「今週の日曜日にデートしようよ」と翼を誘っていた。  翼は変わらずスマホを見ていて話をまともに聞いていないけれど、何も返事がないことを肯定だと思ったのか、松山さんは嬉しそうに行きたい場所の話を続けている。

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