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どうしてこうなった-11
「じゃあ今週の日曜日の11時ね!」
松山さんは、最後にぎゅうっと腕に抱きつき、それから駅名を伝えた。
翼はあまり聞いていない様子だと思っていたけれど、変わらずぼーっとしたまま、「日曜日の11時ですね」と返す。
「そうそう、ありがとう! 楽しみにしているね!」
恥ずかしくなったのか、後から何でしたっけ? と言われたくないのか、意図は分からないけれど、松山さんは翼を置いて、少しスキップ気味に去って行った。
ようやく翼とふたりになれて、今すぐその腕を引っ張って連れ帰れば良いのに、そうする勇気が出ない。
どんな状況であれ、翼があの子とのデートを了承したのは事実だし、それを見てしまった。
既読がついたメッセージに返信をしてもらえることもなければ、翼はスマホをポケットに入れて、歩き始めている。
自分のメッセージを目の前で無視され、どうしようもなく悲しくなった。
「……っ、」
もうどうしようもないのか? と、思わず後退りしたとき、じゃりっと音がしてしまい、翼が誰かいるのかと振り向いた。
「航大……、何で?」
何で? お前と連絡がつかないからだろ。ずっと顔も見れなくて寂しかったんだ。
そう言えば良いだけなのに、その通りに口が動いてくれない。
代わりに、「デートするのかよ」と、まるで煽るかのような言葉が出てきた。
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