154 / 186

どうしてこうなった-11

「じゃあ今週の日曜日の11時ね!」  松山さんは、最後にぎゅうっと腕に抱きつき、それから駅名を伝えた。  翼はあまり聞いていない様子だと思っていたけれど、変わらずぼーっとしたまま、「日曜日の11時ですね」と返す。 「そうそう、ありがとう! 楽しみにしているね!」  恥ずかしくなったのか、後から何でしたっけ? と言われたくないのか、意図は分からないけれど、松山さんは翼を置いて、少しスキップ気味に去って行った。  ようやく翼とふたりになれて、今すぐその腕を引っ張って連れ帰れば良いのに、そうする勇気が出ない。  どんな状況であれ、翼があの子とのデートを了承したのは事実だし、それを見てしまった。  既読がついたメッセージに返信をしてもらえることもなければ、翼はスマホをポケットに入れて、歩き始めている。  自分のメッセージを目の前で無視され、どうしようもなく悲しくなった。 「……っ、」  もうどうしようもないのか? と、思わず後退りしたとき、じゃりっと音がしてしまい、翼が誰かいるのかと振り向いた。 「航大……、何で?」  何で? お前と連絡がつかないからだろ。ずっと顔も見れなくて寂しかったんだ。  そう言えば良いだけなのに、その通りに口が動いてくれない。  代わりに、「デートするのかよ」と、まるで煽るかのような言葉が出てきた。

ともだちにシェアしよう!