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どうしてこうなった-12
「……デート?」
「さっき一緒にいたの、松山さんだよな? お前のことデートに誘ってたじゃん。最後に日曜日の11時からって言って、お前も復唱してただろ」
翼の眉間に一瞬皺が寄ったように見えたけれど、すぐに戻った。
それからしばらく考え込み、俺の話からさっきの松山さんとのやりとりを思い出す。
ああ……と繋がったようで、自分が何となく返事をしたあのやりとりは、デートの約束だったと気づいたようだった。
さすがにぼんやりしたときは流していたけれど、今俺を前にして、そのデートに行くなんて言わないよな?
「松山先輩とのデートね、行くよ」
「……はあ?」
それなのに翼は、あっさりと行くと言い、俺の期待は裏切られた。
それを伝えられた俺がどんな反応をするのか見たかったのかもしれないが、さすがに俺が素直に「行かないで」と言える状況ではない。
「へえ、行くんだ」
「まあね」
「家には戻って来ない気か?」
「……うん」
少しの間があいた後で、翼が小さく頷いた。あれだけ俺のことが好きだと言っていたくせに、自らそれを手放すんだ。
「でも、同じ友人の家に居続けられないだろ?」
頼むから、戻ると言ってくれ。
「そしたら松山先輩の家に行くよ」
絶対に俺の期待通りの言葉を言わない翼に、もうそれ以上何もできることはないと思い、「分かった」と頷いた。
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