186 / 186

溺れて沈む-17

 俺が購入した指輪をまず自分の左手の薬指にはめると、それより大きめのサイズの指輪をそっと持ち上げ、翼の指にはめた。 「じゃあ俺も」  俺の指輪に重ねるようにして、翼は自分が購入した分を通し、それから残っているもう一つの指輪に触れる。  俺は自ら翼に手を差し出した。  翼にはめてもらうと、自分でしたときとは違った、不思議な感覚がする。 「航大、言っとくけど俺、ただのペアリングのつもりで買ってないからね」 「俺だってそうだよ。覚悟を示すために買ったの。結婚指輪みたいなもんだよ」 「はは、そっか……。航大、俺とずっと一緒にいてくれる?」    翼が優しく笑い、指輪にキスを落とした。 「俺の台詞だよ。俺から言いたかったのに」  天井に向かって、ふたりで手を伸ばす。  ダイヤはないけれど、光に当たって指輪がキラキラと輝いていた。  こうして見ると、ふたつあって良かったかもしれない。良い感じに重なり合い、俺と翼が寄り添っているみたいだ。  勝手にそう思いながら頬を緩めて笑っていると、そこに翼がちゅっとキスをした。  何笑ってんの? と聞かれ、別にとだけ答える。  恥ずかしくて正直に言えなかったけれど、翼はきっとお見通しなのだろうと、俺を見つめるその目を見ながら、そんなことを考えた。   「……航大、そろそろ溺れるだけじゃなくて、沈んでくれた?」 「まだそれ言ってんのか。そんなこと言われたって今さらだわ。とっくに沈んでるよ」  まるで誓いのキスのように唇を重ねると、人生で1番特別な日に思えた。

ともだちにシェアしよう!