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溺れて沈む-16

 一度深呼吸してリボンをほどき、黒い箱を取り出して中を開けると、シンプルなリングがふたつ並んでいた。  嬉しいけれど、嬉しいのは当たり前だけれど……! こういうときこそ俺が決めたかったのに……。  それが顔に出ていたのか、俺の表情を見て翼が不安そうな顔をした。 「もしかして、気に入らなかった?」 「違……! 違うんだよ……。ちょっと待ってて」  俺はソファから立ち上がり、自室から似た様な小さな箱を持ってくると、翼に渡し、ソファの上で正座をした。 「え?」 「……な? そうなるだろ?」 「これって、もしかして」 「そのもしかして、です」  一瞬きょとんとした翼が、ふいに吹き出し、クククと笑った。  それから、翼も同じように丁寧にリボンをほどき、ゆっくりと箱を開ける。  中から、これまた俺がもらったのと似たような黒い箱を取り出し、そっと蓋を開くと、目を輝かせた。  俺はウェーブタイプにしたから、翼のとデザインが少し違うのが救いだったかもしれない。 「まじか……」  翼と俺の間に、ふたつの箱を並べて見比べる。 「まさか航大がこれを用意してくれるとは……」 「意外だって言いたいのかよ。いつまでそんな感じなんだ? 俺だって翼のこと好きだって、そう言ってんだ……」  言い切る前に、翼が俺の口を塞ぎ、くしゃりと笑った。その顔に弱い俺は、それ以上何も言えずにモゴモゴと黙る。 「嬉しいんだよ、ありがとうね」 「俺のほうこそ、予想外だったけど嬉しかった。ありがとうな」

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