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溺れて沈む-15

 翼は酔っているのか、頬が緩みっぱなしで、なかなか良いムードにならない。  さすがに真面目な雰囲気で渡したいんだが? と思っていると、翼が両手を広げ、抱きしめてきた。  ぐぐっと体重をかけられ、「苦しいわ!」と押し返すと、へらへらした翼は消え、真剣な顔で俺を見ていた。 「翼? どうした、んだ……よ。……お?」  いつ用意したのか、リボンがかかっている小さな箱がすぐ目の前にあり、鼻に押し付けられる。 「クリスマスプレゼント!」  ん、と改めて差し出され、思わず両手を広げると、翼は俺の手のひらに乗せた。  小さくて、軽い箱。そしてそのリボンに書かれているロゴを見ると、知っているブランドだった。  俺が選んだところとは違うけれど、候補の一つにしていた店だ。  ということは、これって……。 「……待って、まじで?」 「予想がつく?」 「予想も何も……」  俺も同じものを用意したんだが? と、パニックになる。それに先を越される予定はなかった。  翼は大学卒業のタイミングで、こういうことをしそうだなと思ったからこそ、俺はそれよりもかなり早い、今回のクリスマスにしたというのに。  ……いや、待てよ。ペアとは限らないだろ。俺用の指輪を買ってくれているかもしれない。  それとも、ネックレスかブレスレットか? 俺が今まで身につけていなかったからこそ、初めてをもらうぞ的な意味で……。  箱をじっと見つめながら、頭の中で色々と考えていると、「すぐに開けなよ」と翼に笑われた。

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