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溺れて沈む-14
◇
新しいマンションに引っ越して数か月が経ち、季節はすっかり冬になった。
もうすぐ、恋人になって初めてのクリスマスがやってくる。
何をプレゼントしようか迷ったけれど、翼の希望を聞かずに、俺はあるものを用意していた。
翼も何が良いか聞いてこないから、お互いにサプライズになりそうだ。
クリスマス当日は、金曜日だったから、お互い大学と仕事を終え、それぞれ分担していたものを受け取ってから帰宅した。
お酒は既に買っていたから、翼はチキン、俺はケーキを持ち帰った。
食べて寝るだけにしたいからと、先に風呂に入り、綺麗な状態になってから食卓を囲む。
「今までのクリスマスで1番楽しいかも」
翼はまだ酒も飲んでいないのに、デレデレとした顔で酔っているみたいだ。
プレゼントはいつ渡すのが良いだろうか。食後のどのタイミングにしよう。
目の前においしい料理や酒があるにも関わらず、俺はその後のプレゼントで頭がいっぱいだった。
「もう腹が限界……」
「うう……」
購入したほとんどを食べ尽くした俺たちは、片付けを終えた後、ソファに倒れるようにして座った。
しばらくは動けないくらいにお腹が苦しい。
「これじゃあしばらくセックスできないね」
「今日は無理だろ」
「聖なる夜にってやつ」
「キショいこと言うな」
翼を軽く叩くと、へらへら笑いながらキスをされる。
「航大、チキンの味がする」
「……うるせえ」
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