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第4話「誕生会(中編)」

「本日はお招きいただきありがとうございます、ルシオ様。」 次に控えていたのは公爵令嬢、アンナ=カロリング。 まるでお手本のようなお辞儀から始まるとても貴族らしい挨拶に少し安心しつつ、こちらも挨拶を返した。 彼女も同い年なのだが赤髪のロングで少し気の強そうに見える美人で、既に大人顔負けの色気もある。 いわゆる悪役令嬢で、王子ルートでは婚約者候補の1人として対立することになる。 「ところで…アダルベルト殿下ととても仲がよろしいのですね。」 「畏れ多いことでございます。ただ、陛下はとても気さくな方ですので他の方にも同じように接していらっしゃるかと。」 「そうかしら。少なくともわたくしには一度も仰ったことはありませんでしたわ。」 「それはきっと公爵家の御令嬢という立場を慮ってのことではないでしょうか。」 「少なくとも呼び捨てまでさせる方は王室の方以外では聞いたことがありませんわ。」 どうしよう。 もしかして主人公(ヒロイン)補正で悪役令嬢とは自然と敵対するようになっているのか。 事実はどうあれ、変に敵視され俺の穏やかな学園生活を脅かすのは遠慮願いたい。 「私は男ですし、きっとまだ同性の友人が珍しいのでしょう。同年代の貴族令息で立場が1番近いのは私ですから。」 遠回しに恋敵になり得ないこと、あくまで友人であることを強調して伝える。 「性別なんて… 「お嬢様、そろそろ…」 先ほどからずっとそわそわしていた側仕えの執事が痺れを切らしたようだ。 「失礼いたしました、わたくしも時間を取り過ぎてしまいましたわ。」 その後、アンナ様と手短にお別れをした後は滞りなく他の方々と挨拶をしていった。 最後尾に並んでいたのは幼馴染のエリオットだった。 「よう!誕生日おめでとう、ルシオ。」 「ありがとうエリオット。そして誕生日おめでとう。」 「ははは、1日早いけどありがとう。プレゼントはなんだ?」 彼は隣領バルベリーニ男爵家の長男で、彼も攻略対象だ。 実はリカルドを助けるために街に行った際に、エリオットの誕生日プレゼントも買っていた。 彼とは物心ついた頃からよく遊んでいたためもはや家族に近い。 背は俺よりも高いが貴族らしい花々しさはなく、俺としては親近感があった。 そしてゲームでは知らなかったのだが、誕生日が俺とは1日違いだった。 もしかすると彼のルートで分かるようになっていたのかもしれない。 「はい、どうぞ。」 「やった!俺からはこれだ、大事にしてくれよ。」 俺からは腕時計を渡し、エリオットからは万年筆と手帳を貰った。 万年筆と手帳はエリオットお揃いらしい。 「ありがとう。どちらも長く使えそうだな、大事にするよ。」 「すごくいい時計だな、一生の宝物にする!…あれ?ルシオのとはお揃いじゃないんだな。」 「ああ、それは町で見つけた一点物だから同じものはないんだ。」 珍しい物だと知りエリオットは喜んでいたが、何故か少し悲しそうにも見えた。

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