12 / 256
第三章 健人のトラウマ
「健人さんの想いを踏みにじった相手は、許せません。その人に、報復してやりましょう!」
「いやいや、待って。ちょっと、待って!」
確かにショックな出来事ではあったが、復讐など思いつきもしなかった健人だ。
由宇の、意外に過激な発言に、慌てた。
「もしかしたら、この世の人々にとっては平凡な出来事かもしれないし!?」
「プロポーズ失敗が、ですか?」
「うん……」
「ほら、やっぱり。まだ胸に、わだかまりが残ってるんですよ」
僕に話せば、少しはスッキリするかも、との由宇の言葉に、健人はうなずいた。
苦しかった、寂しかった、そして……。
(そして誰かに聞いてもらいたかった、と私は心の奥で望んでいたんだ)
「じゃあ、話すよ。由宇くん、笑わないで聞いてくれる?」
「それは聞いてみないことには、解りません」
「クールだなぁ」
ともあれ、健人は由宇に向かって、ほんの一週間前に味わった地獄について語り始めた。
ともだちにシェアしよう!

