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第三章 健人のトラウマ

「健人さんの想いを踏みにじった相手は、許せません。その人に、報復してやりましょう!」 「いやいや、待って。ちょっと、待って!」  確かにショックな出来事ではあったが、復讐など思いつきもしなかった健人だ。  由宇の、意外に過激な発言に、慌てた。 「もしかしたら、この世の人々にとっては平凡な出来事かもしれないし!?」 「プロポーズ失敗が、ですか?」 「うん……」 「ほら、やっぱり。まだ胸に、わだかまりが残ってるんですよ」  僕に話せば、少しはスッキリするかも、との由宇の言葉に、健人はうなずいた。  苦しかった、寂しかった、そして……。 (そして誰かに聞いてもらいたかった、と私は心の奥で望んでいたんだ) 「じゃあ、話すよ。由宇くん、笑わないで聞いてくれる?」 「それは聞いてみないことには、解りません」 「クールだなぁ」  ともあれ、健人は由宇に向かって、ほんの一週間前に味わった地獄について語り始めた。

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