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 由宇には取説が同封されていなかったので、健人は彼自身にいろいろと訪ねた。  その答えによると、由宇は限りなくヒトに近い性能を、備えているらしかった。  飲食はもちろんのこと、バスタブに浸かることもOK。  できれば一日の内に、最低でも6時間程度のスリープモードに入りたい。  まだ実際にやったことはないが、家事も全てできる。  そんな彼に、健人は深い溜息をついた。 「すごいね、由宇くん。ホントに、アンドロイドとは思えないよ」 「ありがとうございます。今度は、僕が質問をしてもいいですか?」 「いいよ。何かな」 「健人さんは、なぜ僕を傍に置こうと考えたんですか?」  由宇は、いきなり核心を突いてきた。  健人の胸に、思い出したくもない、苦い経験が甦ってくる。 (プロポーズに失敗して、寂しかったから。なんて、カッコ悪いよな)  だが由宇は、これからずっと一緒に暮らす友達だ。  そんな相手に、初めから隠し事やごまかしをすることは、ためらわれた。 「実は、つい最近プロポーズに失敗したんだ。それで、たまらなく苦しくて」  だから、君に傍に居て欲しい、って思ったんだ。  健人の告白に、由宇は優しい言葉を掛けてくれた。 「悲しい思いをしたんですね。可哀想に、辛かったでしょう?」  健人を見つめる由宇のまなざしは、慈愛に満ちている。 「由宇くん……」  その瞳に吸い込まれそうな気持ちになった時、健人は耳を疑った。 「復讐しましょう」 「えっ?」 「健人さんの想いを踏みにじった相手は、許せません。その人に、報復してやりましょう!」  健人は、口をポカンと開けた。  愛らしい姿とは裏腹に、由宇は過激なプログラムをされているのかもしれなかった。

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