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さて、と健人は改めて由宇をリビングに招待し、ソファに掛けさせた。
「待ってて。あ、そうだ。紅茶とコーヒー、どっちがいい?」
「コーヒーを、お願いします」
浮き浮きとキッチンでコーヒーを淹れながら、健人は気が付いた。
「由宇くんは、アンドロイドだったっけ」
飲み物を体内に入れると、故障の原因になるかもしれない。
「でも。当たり前のように、コーヒーを、なんて返事したよなぁ」
健人は薫り高いマンデリンをカップに用意し、リビングで由宇に勧めながらも訊いてみた。
「由宇くんは、ヒトと同じ飲食はOKなの? 故障しない?」
「大丈夫です。僕は、ヒトと同じものを食べたり飲んだりできます」
体内に入った有機物は、全て動力源として使うエネルギーに変換されるのだ、という。
「そんな夢みたいなメカニズム、いつ実用化されたの?」
「あぁ、いい香りですね。これが、コーヒー。飲んでもいいですか?」
「あ、うん。いいよ」
健人の質問はスルーされてしまったが、コーヒーの香りを楽しむ由宇の表情がとてもいいので良しとした。
「どう? 初・コーヒーの味は」
「苦いです。でも、後味に甘さがあります」
美味しい、と微笑む由宇の笑顔は、花丸だ。
健人も、嬉しくなった。
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