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少し心配な健人だったが、由宇は二本の足でちゃんと歩いている。
問題なく、起動できたようだ。
まずは安心して、健人は由宇にデスクトップパソコンを、披露した。
「一般消費者向けだけど、ハイスペックだよ。高性能CPUを搭載してるし……」
説明の途中で、健人は言葉を失った。
パソコンが勝手に起動し、画面いっぱいに謎の文字列が流れ始めたのだ。
「あ! ちょ、大変だ! ウィルスに感染したかも!?」
「大丈夫。ウィルスには、感染していません」
「え?」
「僕が、アクセスしているだけです。少し、時間をください」
由宇はわずかに首を上げ、軽く目を閉じた。
風も無いのに、ふわりと絹のような髪が動いている。
健人は、再び心配になった。
「もしかして、静電気? まさか由宇くん、帯電してない?」
「……安心してください、終わりました。健人さんは、心配性ですね」
こちらを見て、にっこりと微笑む由宇に、健人はドキリとした。
(か、可愛い!)
そんな健人に、由宇はクールだ。
「健斗さん、血圧と心拍数が上がっています。横になって、休みませんか?」
「あ、いや。これは、その。……由宇くんの笑顔って、素敵だね」
「えっ……」
笑顔が素敵。
僕の笑顔は、素敵。
由宇が、健人から初めて教えてもらった言語だった。
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