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 健人も、父の影響でサブカルチャーが好きだ。  少年のように明るい心で、子ども向けのヒーローやヒロインのおもちゃを手にしていた、父親。  勤めも、そういった物のデザインや開発に関わる仕事だった。  そして母も、そんな父といつも笑顔で、オタク語りをしていたものだ。 『今度の変身グッズは、歯ブラシがモチーフだ!』 『歯ブラシ? 少し地味じゃない?』 『磨けば、ピカピカ光るんだ。磨き残しが無くなれば、レインボーに輝く』 『確かに、それだと子どもは喜んで歯磨きしそうね!』  父の奇抜なアイデアを、頭ごなしに否定せずに、寄り添っていた優しい母親だった。  健人は、アニメキャラの缶コーヒーを受け入れてくれた美咲に、母と同じ包容力を感じたのだ。   『お父さんが集めてるんだったら、これ、あげるよ』 『いいんですか!? パパ、喜びます!』 『よろしく言っといて』 『私も、集めてみよっかなぁ~?』  こんな美咲に、健人はころりと参ってしまった。

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