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 美咲は、明るい元気な子だった。  健人を、悪い意味でのオタク扱いもしなかった。 『長谷川さん! これ、パパからのお礼です!』 『チケット? ガンデオンの新作映画じゃないか』 『おかげさまで、コンプリートできました、って。二枚あるから、誰かと……』 『よ、良かったら。吉井さん、一緒に行かない?』  初デートは、瞬く間に決まった。 『私、ガンデオンは一作目しか知らないんですぅ。パパのDVD、子どもの頃に見ました』 『今回の映画は、一作目のキャラが出てくるから、解りやすいと思うよ』  もちろん映画の後は、食事にも誘った。 『すごぉい。展望レストラン、初めてです!』 『ここからの夜景が『ファイン・ドラゴン13』の、エンディングシーンに使われたらしいんだ』 『ファイン・ドラゴン13、って。ゲームの? 』 『うん。さっそく買って、クリアしちゃった』 『クリア、って。発売から、まだ2日しか経ってないのに?』 『割と簡単だったから』  そこで再び、すごぉい! と来るのだ。  ゲームを2日でクリアして、褒めてくれる人なんか、今まで両親以外に誰もいなかった。  健人は、どんどん美咲に夢中になっていった。

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