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第八章 嬉しい健人
「あれ……?」
目覚めて、健人はベッドに一人だった。
「由宇くんは?」
てっきり、彼が隣で寝ているとばかり思っていたのに。
昨夜は、熱いひとときを過ごした。
「それが、まさか夢、とか言わないよな?」
由宇が届いたことが、健人に微笑んでくれたことが、全て夢。
もしそうだとしたら、ひどい悪夢だ。
パジャマ姿のまま、健人は急いで寝室から出た。
スリッパも履かずに、素足で廊下を歩いた。
すると、何だか良い匂いが漂ってくる。
香りをたどってダイニングへ行くと、そこには由宇の姿があった。
「由宇くん!」
「おはよう、健人さん」
「良かった……。夢じゃなかった」
「おやおや。まだ、寝ぼけてるんですか?」
テーブルには、美味しそうな朝食の準備が整っている。
「さぁ、できました。健人さん、食べる前に顔くらい洗ってきてくださいね」
由宇はそう言うと、にっこり笑った。
昨日と同じ、いや、昨日より素敵に見える笑顔が、健人は嬉しかった。
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